2015年から6人の高卒プロ選手を輩出している花咲徳栄。2019年秋にもその期待がかかる選手がいる。それがショートで主将の韮沢 雄也だ。新潟シニアから花咲徳栄に進んだ1年春からベンチ入りし、夏には全国優勝を経験。2年夏も甲子園に出場した。右・左投手を苦にしないバットコントロールが光る打撃と、三遊間の深い位置からでも刺せる強肩を生かした遊撃守備が売りのショートストップである。そんな韮澤にこれまでの歩みと意気込みを聞いた。小学生で憧れた甲子園の舞台 高校1年夏でいきなり実現韮澤雄也(花咲徳栄)  韮澤が野球を始めたのは小学校1年生から。チームに入ったのもその時からだ。 「お父さんに車に乗れといわれて、それで『寝とけ』と。起きたらグラウンドで。外で野球をやっていました。それが僕のスタートです」 韮澤が野球にのめりこんだのは、2009年に日本文理が甲子園準優勝したことも影響している。テレビで活躍する日本文理の選手たちに目を奪われ、ショートを守っていた高橋 隼之介に憧れた。  小学校の時は投手と遊撃手を兼任。1番ショートとして打撃に自信を持っていた韮澤は全国大会出場経験が豊富な新潟シニアに進む。魚沼市在住だった韮澤は、親の車で新潟市にあるグラウンドまで1時間かけて通った。練習日は火、木、土日の週4日間。早朝に遠征による移動がある場合は新潟市に住む友達の家に泊めてもらって通うことがあった。  苦労したのは守備。リトルと比べダイヤモンドが大きくなり、必然的に投げる距離が遠くなる。そこで、どうすればダイレクトスローができるかを考えて取り組む毎日だった。また打撃面でもがむしゃらに取り組み、ジャイアンツカップ出場を経験する充実の3年間を送った。韮澤雄也  そして韮澤は新潟を出て花咲徳栄に進学することを決断する。「バッティングがすごいところに魅力を感じていて、当時3年生だった岡﨑 大輔さん(オリックス)に憧れました」と入部を決断した。  初めての寮生活。韮澤は練習量よりも寮生活の方で苦労したとか。慣れない寮生活の中、食事などにも少しずつ慣れながら、1年春からベンチ入りを果たす。 「1年生なのでとにかく元気を出して、ノックなどで声だけは出してました」  また、二遊間には偉大な先輩がいた。二塁には主将で、駒大に進んだ千丸 剛、遊撃手には深谷組に進んだ岩瀬 誠良がおり、2人からいろいろなことを学んだ。特に同じショートの岩瀬から学ぶことは多かった。 「岩瀬さんは非常に肩が強く、目標となりました。どう教えてもらったかというより、どうすれば岩瀬さんのようなスローイングができるか。それを考えて日々の守備練習に取り組みました」  また打撃面では西川 愛也(2017年埼玉西武ドラフト2位)から学んだ。 「インパクトまで持っていくヘッドの軌道、下半身の使い方を学んだりしていました。本当に先輩の方々には優しくしてもらいました」  こうして、韮澤は1年夏に甲子園優勝を経験。ベンチから先輩たちの優勝の瞬間を見届けた。 「最高に嬉しかったです。甲子園を目標にやってきたので行きたかったですし、それが1年生の夏で体験できて、本当に嬉しかったです」  そして1年秋にはショートのレギュラーとなった韮澤。しかし関東大会の初戦で敗退してしまう。1年冬の強化練習を乗り越え攻守ともにレベルアップノックを受ける韮澤雄也 「エラーも多く、あまり打てなくて、チームに迷惑をかけてしまった」と反省する韮澤は冬場、振り込み、ハンマートレーニング、外野のアンツーカで作られた砂場でのトレーニングを日々繰り返した。冬場を超えると、プレー全面に力強さが出てきた。 「弱かった肩も強くなりましたし、三遊間の深い位置でも刺せるようになりました。それほど力を入れなくても送球は力強くなったので、プレー面の幅が広がったと思います。また打撃面でも力強い打球が打てて、飛距離も変わってきました」と手ごたえを実感していた。  その成果が出た春先は好調をキープ。春季関東大会では2試合で、9打数4安打4打点の活躍。守備では専大松戸戦では三遊間の深い位置からダイレクトスローでアウトにするなど攻守で活躍した。韮澤は「春の大会は好調で、ボールが良く見えていました。専大松戸戦のショートゴロをアウトにしたプレーは自分でもナイスプレーと呼べるほど良いプレーでした」と振り返った。  2年夏の北埼玉大会では17打数6安打、打率.353、3打点の活躍。しかし韮澤自身、満足いく出来ではなかった。 「夏の北埼玉大会は自分の中では打てなかったし、守備もミスがあって、県大会はちょっと悔しかったです。甲子園に行ってから、タイミングの取り方をちょっと変えて、早めにとるようにしました。実は甲子園入りしてから、プロ野球を観に行ったんです。京セラドームでオリックスの試合を見て、タイミングを早く取らないといけないと思いました」  そして甲子園では2試合で、5打数2安打の活躍。横浜戦では及川 雅貴(2年)からタイムリーを打った。  「左投手で、速球も凄くて、変化球も鋭い投手から打てたことは自信になりました」と順調にステップアップした。憧れの岡崎大輔さんを超える!主将としてチームを引っ張る!  甲子園後、韮澤は主将に就任。中学時代もキャプテンだったが、人数も違えば、花咲徳栄は全国から選手が集まる名門。「責任を感じた」と語る韮澤は前主将の杉本 直希に相談し、「自信をもっていけ」とアドバイスを受け、チームを引っ張っている。また北海道日本ハム2位指名を受けた野村 佑希は韮澤に対して、こう期待を込めている。 「韮澤はすごくセンスがあって野球も上手で、何よりすごくストイックで、努力できる選手です。強いチームを作ってくれると期待しています。あとは少し大人しい部分があるので、もう少し強く引っ張る姿を出していってもいいと思います」  この秋は2回戦で埼玉栄に敗れ、春は地区予選からスタートする。韮澤は今後の課題をこう語った。 「冬を通じてスピードとパワーを両立して鍛えていきたいと思っています。バッティングでは筋力をつけて、飛距離を今以上に伸ばしてたいですし、スピードをつけてプレーの幅を広げ、さらに肩を強くしていきたい」  目標は2016年にプロ入りした岡﨑 大輔を超えることだ。 「岡崎さんを超えて、そして甲子園を目指します」  花咲徳栄の左打ちショートといえば、岡崎だけではなく、大塚 健太朗(オールフロンティア)、今年千葉ロッテで引退した根元 俊一と活躍したOBが多い。そんな先輩たちを超える選手になるために、韮澤は二度目の冬を乗り越え、全国クラスのショートとなり、3年連続となる夏の甲子園出場を成し遂げて見せる。 文=河嶋 宗一 注目記事・プロ野球2018ドラフト特設サイト

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