投球フォームコマ比較 一覧再生リスト https://www.youtube.com/playlist?list=PLGKO8sySmje1SR7zIFmY6p-D5IxSkcNYR
腕が宙をかくリリースのタメ
左上 江夏豊(広島)、左下 杉内俊哉、右上 工藤公康(西武’91)、右下 工藤公康(ホークス)

リリース態勢に入り、前腕が立ち上がり、腕全体が一直線で上へ伸びた時点では、上体と腕の位置関係は、垂直より後方寄りの角度を取っている様に見える。
垂直から若干前へ肩が回った付近でリリースが行われており、この僅かな時間の間が、球が指に引っかかることにつながり、球に伸びが生まれると思われる。

3投手とも体が柔らかく、しなやかなフォームであると思われる。

江夏
広島時代には、病気により筋力が落ち、握力が15まで下がる日もあり、本来の力は失われていた様である。
前足を踏み込む際、上体の重心は後ろに残しており、後ろ足で体を前に押し込み、股関節の力で踏み込んでいる様に見える。
強い股関節と後ろ足の膝の捻りにより、前へ踏み込む力を与えている様に見える。
前足が着地した時、後ろ足の捻りの力により、腰に力が溜まっており、肩は後ろに残したまま、屈めていた上体を起こしている。
上体を起こすことで、その後の回転を容易にして、また、肩を後ろに引いている時間を長く取れるので、肩に多くの力を溜めることができると思われる。
十分な力が下半身に溜まり、その力を上体の回転に使いながら腕を振っている。
前腕が立ち上がり、リリース態勢に入った時、リリース位置は頭の付近であり、空中に伸びた腕が僅かな時間、抵抗を受けた後に、頭、顔の付近でリリースしている。
リリース後に後ろ足を跳ね上げる際、リズム良く綺麗に後ろ足が空中で回転している。
リリース後の動作であるため、球の質にはあまり影響を及ぼさないが、江夏の運動神経の良さを表す指標の一つになると思われる。

杉内
体格のわりに、腰周りが大きい特徴があり、大きな腰、下半身の低さ、柔らかい肩等が、スピードガン表示以上のスピード感を生み出していると思われる。
前足が着地する前に、既に肩は高い位置に上がっており、前足が着地してから、上体が回転することで、後ろに残している肩が引っ張られて強い力が溜まっている。
上体が回転してから、前に上体を倒す辺りで、リリース態勢に入っている。
映像からでは正確に判別できないものの、恐らく3投手の中では、リリースが最も後ろ寄りではないかと思われる。
リリース態勢から、球が離れるまでの時間が、他の2投手よりは若干短い様にも見えるが、上体を倒して体重をかけて、前に押し込む力を増していると思われる。
早い段階でリリース態勢に入っても、腕を後ろから前へ柔らかく押し込んでいるため、実際には球が指にかかる時間は長くなっているのではないかと思われる。

工藤
西武’91において、力に頼った押し込む投げ方から、腕に力を入れない下半身主導のフォームが完成した頃ではないかと思われる。
全体的な低さ、上体の柔らかさは、3投手の中で、西武時代の工藤が優れていると思われるが、西武以降のホークス時代では、若干腰高になっている様に見える。
西武時代のリリースにおける腕の振りは、江夏の様に、リリース態勢から球が離れるまでに、空中で抵抗を受けながら、腕が宙をかいている様に見える。
江夏に比べると、全体的にリリースは前寄りの様に見える。
ホークス時代になると、年齢とともに体の柔軟性は落ちているが、腕の振りが変化して、リリースで手首のスナップを意識して使っている様に見える。
空中で受ける抵抗による腕のしなりは、若干少なくなっているかも知れないが、腕のしなりに加えて、手首をはっきりと使うことで、球質を改善したのではないかと思われる。

恐らく、初期の頃は、江夏を目指してフォームを作り、途中から江川の様な、前腕を持ち上げて、上から下へ手首のスナップを使うフォームに変化したのではないかと思われる。
西武時代までは、リリース後の前方でのフォロースルーにおいて、大きく弧を描く様に振り下ろしているのに対して、 ホークス時代では、上から下へ手首を振り落とした後、前方で腕、指を突き出しており、実質そこでフォロースルーは終了している様に見える。

まとめ;
どの投手も、リリース直前では肩と腕がが上体に対して垂直の角度より後方にあり、普通の投手よりも後方から大きく腕を振っている。
リリース体勢から実際に球が指から離れるまでにタメがあることで、空中で受ける抵抗により腕にしなりが加わり、僅かな時間であるが球が指にかかることから、優れた球の伸びが生まれるのではないかと思われる。
(了)

ほぼ同様の内容はコチラ http://ykyuu-form.seesaa.net/article/432785165.html

WACOCA: People, Life, Style.