2000年代~(西武~ロッテ) 最多勝3回(2007, 9, 15)
速度を変えて4回繰り返し
フォームの特徴:
・投球初期は、背筋を真っ直ぐ伸ばしているが、踏み込む付近から、上体が前屈みになっている。
二段モーション系の膝の上げ下げ;
・背筋、後ろ足を真っ直ぐ立てたまま、太腿が腹に付くまで、前足の膝を最大の高さまで
上げている。
・前足の脛と膝には力を入れずに、一瞬だけ太腿と脛を密着させるリズムに従い、さらに膝を高く
上げて、膝と前足の付け根に瞬間的に軽く力を溜めている。
・前足の膝を僅かに上げた直後に、脛を太腿から離し、脛と膝を脱力しながらゆっくり下げ始め、
太腿が水平よりやや上の位置で、一瞬動作を止めている。
・前足の膝に力を入れるために、再度太腿と脛を多少近づけた後、前足の膝を伸ばしながら、
一気に前足を斜め下へ降ろしている。
・二段モーションに近い、上記の一連の膝の上げ下げは、なるべく前足に力を入れないままで、
前足の付け根に若干力を入れてから、脱力している前足を力強く降ろすことを意図していると
思われる。
前足の膝の伸ばし;
・脇を締めて、前足の太腿に置いていた両腕は、斜め下へ下がっていく太腿に追随して、両腕とも
真っ直ぐ伸ばして、前足を抱える様に一緒に下がることで、力が逃げるのを防いでいる。
・前足の膝が完全に伸びて、強い力が入った状態で、前足が斜め下へ降りた時は、背筋は
其れなりに真っ直ぐで、両腕は下へ伸ばし、後ろ足はほぼ真っ直ぐ伸びたままの形であり、
ここで体の動きを一瞬止めてから、再度前足の位置を下へ落としている。
前屈み、内股の形での踏み込み;
・前足の膝を伸ばして明確に力を入れてから、後ろ足の膝を少しずつ曲げていくことで、前足が
地面近くまで徐々に下がっていき、次に、両腕を体から離し、前足の太腿と腹を近づけるために、
前屈みの体勢を作っている。
・グローブ側の腕は、体の前に置いて、体の開きを抑え、投げる側の腕は、真っ直ぐ下へ伸ばして、
長時間上体にくっ付けておき、前足の膝は、着地付近まで伸ばす形を崩さずに、力を入れ続ける
特徴が見られる。
・後ろ足の膝が徐々に曲がることが、前への踏み込みに繋がり、序盤は両足の太腿の間隔が開いて
いたものの、踏み込みと共に、両足の太腿がなるべく近づくように、膝の向きを合わせ、内股の
形で、力を逃がさずに踏み込んでいる。
股関節を広げる踏み込み;
・前足の膝を完全に伸ばして一瞬静止した後、腰高の体勢のままで本格的に踏み込むため、
踏み込みは、それ程力感の無い、ゆっくりとした動作となるが、前足の着地辺りからは、
其れなりのスピード感が加わっている。
・両膝を絞って内股になりながら、後ろ足の膝をゆっくり曲げることで、腰が徐々に下がり、
後ろ足の力で、腰が前に押し出されている。
・ある程度腰が下がり、前に進むと、股関節を広げて、両足の力で踏み込むことで、前への
勢いが増している。
肩、肘の引き上げ;
・前屈みを維持したまま、グローブ側の腕は、肩の高さまで真っ直ぐ3塁側に伸ばして、顎を隠す
ことで壁を作り、投げる側の腕は、後方に引かずに、なるべく上体に近い位置に置いて、肘を
絞って上に向けながら、コンパクトな担ぎ上げを始めている。
・両方の二の腕とも肩と水平に広がる形を作り、投げる腕は、絞りが効きながら肩、肘が
引き上がり、グローブ腕は、背中側へ回すことで、回転動作の始動を助けている。
前足の着地~重心移動;
・着地付近に届くと、伸ばし続けていた前足の膝を曲げ、後ろ足の膝を地面側まで捻ることで、
勢いを付けて、着地に移行している。
・股関節が広がり、十分に腰が下がっているものの、全体的には踏み込みが多少ゆっくりで
あるため、前足の膝は鈍角のままで投球を最後まで続け、
また、後ろ足は、ある程度の捻りを加えたところで、動きを止めて、蹴り足を前に進めずに、
後方に残す形を取っている。
・但し、低い体勢で股関節が広がっているため、腰を捻る力が生み出され、着地に合わせて、
屈んでいた上体が起き上がりながら、腰と上体が回り始めるため、さらに腰を捻る力が増して、
けつを後方に突き出す形が作られている。
腕の担ぎ上げ;
・腕は、なるべく上体に近い位置から離さないように設定していて、若干肘を下げて、脇を締める
意識を持ち、手首を頭付近までしか上げないで、体の近くで小さく前腕を担ぎ上げている。
・序盤に前屈みだった上体が起き上がる時に、前腕が担ぎ上がるコッキングを作るため、通常よりも
起き上がる分だけ、担ぎ上げがワンテンポ遅れることになる。
・下半身の踏ん張りが効きながら担ぎ上げる最中に、上体が横回転するため、前腕が担ぎ上がる
時は、通常より上体が前に移動することになり、肩が後方に残る形を取っている。
肩の残し;
・上体が回って打者側を向いた時でも、肩が後方にあるため、打者に見え難い位置から腕を回し
始めて、体の内側から滑らかに腕を振ることが可能となっている。
・上体は主に横回転しているが、肩が後方に残る間、打者側を向いた上体を、前に極端に倒して
いくことで、リリースに移行している。
曲線形の前傾姿勢;
・涌井のリリースの特徴は、勢いを付けずに、ゆっくりと前傾体勢を作ることで、腕を柔らかく
振り下ろすことにあり、力のある球よりも回転の良い球を投げることを目的としていると
思われる。
・体の内側から腕を振りながら、上体が地面と水平になるまでじわじわと前傾する間にリリースが
行われ、その際、柔らかく背骨を反らして上体をしならせることで、リリース直前で
上体に縦回転が加わっている。
・リリースにおいて立ち上がる前腕の角度は、3塁側斜めであるが、上体が曲線形で明確に前傾
するため、腕を縦方向に振り下ろし易くなっている。
リリース~フォロースルー
・股関節が広がった低い下半身の土台を活かして、上体が前傾する間、リリースを我慢することが
可能となり、二の腕が前に倒れてから、前腕が立ち上がり、指先を球に引っ掛けながら、鋭く
手首のスナップを効かせた後、柔らかく縦方向に振り下ろしている。
・前傾体勢で、上体は前足の太腿に密着して覆い被さる形となり、リリースに合わせて、多少
後ろ足の膝を前に進めて、力を集約している。
・力のある球を投げることを目的としていないため、フォロースルーでは力感はあまり見られず、
力強く前足で立ち上がる動作は行っていない。
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プロ入り時は、始動で空中で前足を強く蹴る、力感のあるフォームでしたが、次第に力を入れずに
ゆったりと我慢して、リリースを前寄りにするフォームを作った様です。
極端な前傾姿勢を作りながら、縦方向に振り下ろす点は、ロッテ木樽に近いところがあるように
見えます。
力のある球では無く、球質の良さが持ち味であるため、コンディションにより球の回転が
上がらない日は苦しくなりますが、リリースで粘りを効かせて、打者の間合いをずらす投球術を
活かした、バランスの良い投手と思われます。
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