大正から昭和にかけての版画家であり、旅先の風景を描いた旅情詩人として知られる川瀬巴水を紹介します。

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こんにちは。人から分かる3分美術史。
今日は川瀬巴水について勉強していきましょう。

川瀬巴水。1883年生まれ。大正から昭和にかけての版画家であり、旅先の風景を描いた旅情詩人として知られます。

巴水は明治16年に、現在の東京新橋にあたる露月町で紐職人の息子として生まれました。
幼い頃から絵を好み、月岡芳年の模写をするなどして育ちます。巴水は職人としての家業を続けながらも、円山派の影響を受けた青柳墨川に14歳で入門。続いて南北合派の荒木寛友に入門しました。家業を妹が継ぐこととなると、本格的に画家として身を立てるため、浮世絵師の鏑木清方に入門を希望しますが断られ、岡田三郎助に洋画を習います。27歳で清方に入門を許されると、兄弟弟子の伊東深水の影響を受け、風景版画を制作するようになりました。
その最初の作品が「塩原おかね路」。1918年、巴水35歳頃の作品です。本作で巴水は版元の渡邊庄三郎の信頼を得、それ以後、生涯にわたってともに仕事をすることとなります。
巴水はこれ以後は風景版画家として活動することとなります。また、日本中を旅し、各地の風景を描いたことから、「旅の版画家」、「旅情詩人」と評されました。

巴水の作品を見てきましょう。
「芝増上寺」。1925年、巴水42歳ごろの作品であり、代表作の一つとして知られます。西洋画から学んだ空間構成と、色彩のコントラストが特徴です。大きな人気を博し、類似品が数多く出回ったと云われます。
「品川」。1931年、巴水48歳ごろの作品です。後年の巴水の画風は、極めて写実的で緻密なものとなっていきました。

巴水は渡邊のもとで、深水や橋口五葉らとともに、新版画運動の代表的作家の一人として活動していきました。巴水は1957年に74歳で亡くなりますが、現代においても、西洋画と浮世絵の技法を兼ね備えた作風は、大きな人気を持っています。

以上!

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