第100回全国高校野球選手権記念大会

○金足農(秋田)5-1鹿児島実(鹿児島)●(8日・阪神甲子園球場、1回戦)

ピンチになると、別人になる。それが大会屈指の右腕・金足農の吉田だ。走者を背負った毎回の9イニング中6回、3アウト目を高めの直球による空振り三振で奪った。

象徴的なのが七回2死一、二塁。フルカウントからギアを入れた。本人いわく3段階のうちで「2寄りの3」。145キロの直球は真ん中高めのボール球だったが、鹿児島実・益満にバットを出させて空振り三振に仕留めた。この試合で何度も見た光景だった。

なぜ高めの直球に手を出すのかは、益満の言葉に答えがある。「真ん中だと思って振ったら、高めのボール球だった」。最速150キロを投げる吉田対策として通常より3~5メートル近くで打撃練習をした鹿児島実。「高めは捨てる」と試合中も話し合っていたが、吉田の「ボール球」は、打者には「ストライク」に見えたのだ。

吉田は3年生になってから投球のギアを使い分けるようになった。1段階目はストライク先行。走者を背負うと1段階上げて、体をより大きく使うように意識する。球速が上がり、スピンも利く。最も力を込める第3段階は「コースは狙わなくても伸びで空振りを取れる」という。その片りんを初の甲子園で見せた。

この日奪った三振は14個に上った。ただし、力を抑えて投げた時に打たれて被安打9。球数も157球と多かった。自己採点は「30点」と低い。「みちのくのドクターK」のエンジン全開はこれからだ。

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