楽天×ロッテ CS 第三戦 ハイライト 美馬完封 クライマックス 2013/10/19
◇パ・リーグCSファイナルシリーズ第3戦 楽天2―0ロッテ(2013年10月19日 Kスタ宮城)

 悲願の日本シリーズに王手をかけた。楽天は19日、クライマックスシリーズ(CS)のファイナルステージ(6試合制)第3戦で、ロッテに2―0で勝利。1勝のアドバンテージと合わせて3勝1敗とした。3年目の美馬学投手(27)が散発4安打に抑え、プロ初完封勝利をマーク。1メートル69の小さな右腕が星野仙一監督(66)に大きな勝利をもたらした。20日の第4戦に勝つか引き分けると、球団創設9年目で初の日本シリーズ進出が決まる。

 美馬の目は充血していた。それだけ興奮していた。最後の打者、角中を左飛に打ち取る。本人もびっくりのプロ初完封だ。尊敬する星野監督とがっちりと握手。次の瞬間、頭を叩かれた。心地よい痛みに酔いしれた。

 「怒られた時以外で頭を叩かれたのは初めて。アウトを積み重ねようと必死だったので、完封できると思わなかった」

 1メートル69の小さな体が大きく見えた。美馬は肘に不安を抱える右腕を強く振った。カーブでタイミングをずらし、5回まで4安打無失点。6回以降は「理由は分からないけど質がよくなった」と言う直球を軸に据えた。9回に井口に四球を与えて初めて先頭打者を出塁させたが、続く今江はシュート系の球で二ゴロ併殺。レギュラーシーズン6勝の男が、128球の完封劇を演じた。

 星野監督が就任した11年に楽天入り。同年は中継ぎで23試合に登板も、右肘に古傷があることで連投が大きな負担となるため、オフに先発転向を命じられた。昨季は8勝したが、シーズン終盤に右肘痛を発症。今年2月の沖縄・久米島キャンプは2軍スタートだった。

 釜田、辛島らが1軍でアピールを続ける中、2軍で地道に調整を続けたが「正直、焦りしかなかった」と振り返る。2月中旬に星野監督が2軍を視察。その際にブルペン投球でアピールしようとしたが、力みでフォームを崩した。投球練習後に意気消沈していると、声を掛けられた。「焦らんでええ。お前は開幕ローテーションに入れるつもりや」。表向きは先発陣に「競争」を掲げていた指揮官から寄せられた全幅の信頼だった。

 開幕ローテーション入りしながら5月下旬に再び右肘痛で2軍落ち。レギュラーシーズン最終登板だった4日の西武戦(Kスタ宮城)でも右肘の違和感で3回途中に降板した。それでも第3戦を任された。奮起しないはずがなかった。

 今季は開幕から無傷の24連勝を達成した田中、新人ながら15勝の則本が2本柱を形成も、3番手が不在だった。不安を抱えながら突入した短期決戦で3年目の「星野チルドレン」が好投。星野監督は「今年一番どころか、入団から一番の出来だろう」と目尻を下げた。

 日本シリーズ進出にあと1勝。第5戦までに今ステージを突破すれば、田中が第6戦に先発することなく、万全の状態で巨人との決戦に臨むことができる。その意味で「第3の男」美馬の快投は1勝以上の価値がある。「それ(王手)は考えない。一つ一つやっていくだけ」。会見で柔和な表情だった星野監督が、再び勝負師の顔に戻った。

 ≪1メートル70未満の投手の完封勝利は美馬が初≫美馬の身長は1メートル69。これまでプレーオフ、CSで完封勝利を挙げた投手のうち、最も小さいのは75年(3)戦、77年(5)戦足立(阪急)の1メートル73。日本シリーズでは51年(1)戦、52年(2)戦藤本英(巨)の1メートル70となっており、ポストシーズンで1メートル70未満の投手の完封勝利は美馬が初めてだ。

2 Comments

  1. この伝説の10・19に、近鉄の後継球団と言うべき楽天が、こうして当時の相手・ロッテと日本シリーズ出場をかけて闘うことになるなんて、何かの縁かもしれんな。

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