2026年3月28日(土)、29日(日)に東京ビッグサイトで開催された「AnimeJapan 2026」。国内外から約15万6,000人が来場し、130を超えるブースや多彩なステージイベントで、アニメ・IP業界の“今”を体感できる2日間となりました。
アニメ!アニメ!では今回、株式会社テレビ東京 アニメ局次長 兼 アニメ事業部長の石井成臣さん(以下、石井)にインタビュー。テレビ東京が描くこれからのアニメ展開や、地上波・配信・海外を横断する新たな取り組みについて伺いました。
バラエティやスポーツ、報道までを巻き込み、全社一丸でアニメIPを育てる“オールテレ東”の挑戦。その広がり続けるアニメづくりの現場をお届けします。
部署もグループ会社も巻き込み、初めて“オールテレ東”で挑んだ「AnimeJapan 2026」の展示
――「AnimeJapan 2026」でのテレビ東京の出展内容や見どころについて教えてください。
石井 今回は「テレビ局の裏側」をテーマにしました。表にステージがあるだけでなく、グリーンバック(背景を合成するために使われる緑色のスクリーン)スタジオ風のスペースがあったり、木材を組んだスタジオセットの裏側を再現した壁があったり、たくさんモニターが並んだサブ(副調整室)風のスペースがあったりして、テレビ局の中に潜入するような雰囲気を味わっていただいています。
展示内容としても、ただキャラクターを並べるだけではなく、バーチャルプロダクションで『ブラッククローバー』や『ケロロ軍曹』、『ダイヤのA』といった作品の世界へ入りこめるフォトスポットを設置しましたが、これは弊社の技術チーム「テックラボ」が内製しました。また、デザインは美術製作会社「テレビ東京アート」、放送と配信は技術子会社「テクノマックス」とCS放送局「AT-X」、グッズ販売も「テレビ東京ダイレクト」が手掛けていますし、「テレビ東京メディアネット」が出資した『異世界のんびり農家』の展示もしています。このように今回は“オールテレ東”で取り組みました。
さらに海外からも、中国の子会社「都愛漫」が制作した、『銀魂』の日本未発売グッズを販売しています。前回まではステージメインの出展だったのですが、今年は展示も大盛況です。みなさんに楽しんでいただけているのではないかと思います。

――テレビ東京のアニメ放送・制作の特徴について、教えてください。
石井 「多種多様な放送枠がある」ということですね。深夜もあれば夕方も、ゴールデンタイムも、土日の朝もありますので、お預かりする作品のターゲットに合わせて枠を設定し、それぞれしっかり告知をしていけるところが我々の強みだと思っています。特定のジャンルに注力するというよりは「それぞれの枠に合ったターゲット設定の作品を選んで配していく」というのが我々の基本戦略です。「この枠にこういう作品が欲しい」というところは、アニメ事業部員個々の意見も参考にしながら、きちんと熱量がこもった作品を放送しています。
名作77作品の“神回”を一挙公開――ファンの心をくすぐる新生「テレ東アニメYouTube」
展示入口にはBLEACHの立像を設置(©久保帯人/集英社・テレビ東京・dentsu・ぴえろ)
――テレビ東京のアニメ放送・制作において、デジタル配信を意識した取り組みについて教えてください。
石井 この3月に「テレ東アニメYouTube」をリニューアルしたのも取り組みのひとつですね。今回のリニューアルにあたって過去の77作品で、全話の中から「この回はすごかった!」という1エピソード、いわゆる「神回」だけをピックアップして配信しています。そもそも過去作品が膨大な数ありまして、なにせ地上波キー局で放送しているアニメ作品の半分近くがテレ東の作品になりますので、こうした取り組みが可能です。
無難に第一話ではなく最終回を選んだり、社会現象になった作品もあったりする一方で、『パリに咲くエトワール』の谷口悟朗監督や脚本の吉田玲子さんが過去に参加されていた作品のエピソードもあるなど、セレクトも面白いんですよ。おかげさまで非常に好評をいただき、チャンネル登録者が一気に10万人以上増加しました。
――アニメ放送・制作において、アニメ・IPの海外展開を意識した取り組みについて教えてください。
石井もちろん海外を意識はするんですが、そればかりを重視してしまうと、極端な話としてファンタジーやバトルアクション系の作品だらけになってしまうかもしれない。バリエーションをしっかり保つというのは我々の戦略ではありますので、海外で受ける・国内で受けるはあくまでいくつかある要素の1つとして考えています。
ちなみに、4月から放送されるバラエティ番組『ピッカルチャー~アニメの色んなとこにスポットライトを当ててピカッと光らせてみた~』の中で、我々が直接海外展開している作品のひとつ『NARUTO-ナルト-』のオープニング主題歌を担当されたFLOWのみなさんがアフリカのコートジボワールでのイベントに出演する様子を密着取材しています。アフリカの方々がどれほど『NARUTO-ナルト-』に熱狂しているかが伝わる内容です。ぜひご覧ください。
誰かの人生を変える力を信じて。「アニメが持つ魔法」
4月新番組「キルアオ」の教室を再現(©藤巻忠俊/集英社・「キルアオ」製作委員会)
――アニメ放送・配信を軸とするIPビジネス業界は今後どのように推移していくと考えていますか?
石井 エンタメの時価総額が自動車産業を抜いたりして、アニメ産業が日本経済の救世主になるんじゃないかというような話も出ていますけれども、その意味では、アニメ業界のみなさんは仲間のようなものだと思っています。お互い切磋琢磨しながらやっていくつもりでいますし、優勝劣敗も起こる中で、遅れを取らないよう努力したい。そのためには“良質なアニメを届け、残していくこと”が大切だと考えています。
――石井さんが考える「良質なアニメ作品」とは、例えばどんなものでしょうか?
石井 難しいですが、例えば「誰かの心に届くことで、その人の生きる糧になるような作品」かなと思います。アニメに限らずエンターテインメントの力として、たとえ実在しないキャラクターでも“その言葉に支えられて生きている”という人も多いのではないでしょうか。
昨秋放送したアニメがテーマのバラエティ番組に、アメリカの『NARUTO-ナルト-』春野サクラのコスプレイヤーさんが出演されました。サクラは自分の能力のなさに劣等感を覚えていたけれども、人を助けることに道を見出して医療忍者になります。そしてそのコスプレイヤーさんも「サクラのような人になりたい」ということで看護師の道へ進んだそうなんです。まさに『NARUTO-ナルト-』が人の心を動かし、人生の糧になっているのを目の当たりにして、あらためて誰かの人生に資する作品を届けなければと思うようになりました。
バラエティも報道もスポーツも味方に。“オールテレ東”で広がるアニメの可能性
©藤巻忠俊/集英社・「キルアオ」製作委員会
――そのために、テレビ東京が描く2026年以降のアニメ放送・配信戦略とは?
石井 今、テレビ東京全体で「IPを大事にしていこう」という機運がこれまで以上に高まっています。例えば、野球がテーマの『ダイヤのA』第4期のPR番組はスポーツ局が作ってくれました。MLBの千賀選手をはじめ、『ダイヤのA』を読み、アニメを観て育ってきているプロ野球選手のみなさんにインタビューしています。他にも、バラエティ班にアニメがテーマのバラエティ番組を作ってもらったり、あるいは報道でも原作者にインタビューしたりと、全社をあげてアニメ IPを大事にしながら突き進んでいこうとしているので、そこをより伸ばしていきたいですね。
それから今後、ショートアニメを増やしていきます。日曜朝7時~の新番組「アニもり!」では、『小3アシベ QQゴマちゃん』、『クマーバ(シーズン3)』、『おでかけ子ザメ(シーズン2)』、『デザート キャッチ!ティニピン』を皮切りに、今後もいろいろなショートアニメを投入していく予定です。一部、商品化の権利も自社で保持しています。これから強化していきたいと考えています。
受け取った感想が力になる!ファンと一緒に歩む“テレ東アニメ”のこれから
――視聴者・ファンへ向けてメッセージをいただけますか
テレビ東京のアニメ、過去作品もたくさんありますし、これからもたくさんの新作をお届けしますので、ぜひ「ここが良かった」、「ここは今ひとつ」といったご意見をお寄せいただけたら、我々の励みに……厳しいご意見も含めて励みになります。SNSももちろんチェックしていますので、ぜひ盛り上げていただけたらうれしいです。
【インタビュイープロフィール】
株式会社テレビ東京 アニメ局次長 兼 アニメ事業部長
石井成臣さん

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