元福岡県警刑事部長で、翔士郎ちゃん餓死事件の特別捜査本部長を務めた尾上芳信さんとお伝えします。

宮脇キャスター:
検察側の求刑通り懲役15年となった赤堀被告への判決について、どのように受け止めていますか?

尾上芳信氏(元刑事部長):われわれ捜査に携わった者から言うと、赤堀被告が本件犯行の主導的な立場だったこと、赤堀被告がいなければこのような痛ましい事件は起こっていないと考えておりましたので、当然の判決と受け止めております。

宮脇キャスター:
判決のポイントを司法担当の高田記者に解説してもらいます。

RKB高田佳明:
最大の争点となったのは、「碇被告ら家族への支配」があったかどうかでした。判決の鍵を握った碇被告の証言を裁判所は信用できると判断しました。両被告のSNSでのやりとりやほかの証言内容と合致することなどが理由です。

宮脇キャスター:
碇被告の証言について、捜査段階から法廷に至るまでどのように受け止めていますか?

尾上芳信氏:
碇被告は任意の捜査段階では、自分がだまされていることに気づいていませんでした。取り調べによって徐々に心を開いて、だまされていることに気づいていきました。そうすることでやっと事件捜査のスタートラインにたったという思いがありました。それ以後は、捜査に協力するようになり、供述に基づいて裏付け捜査を行ったのです。SNSやメモなどによって碇被告の供述の信用性を高めました。公判でも一貫してそういった供述をしてくれたと思って見ておりました。

◆当時の捜査トップが語る「支配」の実態
RKB高田佳明:
次に最大の争点となった支配についてです。収入のほぼ全てをだまし取り赤堀被告が提供する食事のみで生活助けを求めるのも困難な状況に陥らせたと認定しています。

池尻キャスター:
尾上さん、この支配、にわかに信じがたいのですが実態はどうだったのでしょうか?

尾上芳信氏:
真実は小説より奇なりという言葉もありますが、本件で赤堀被告が碇被告にとった態様については非常に巧妙にだましています。それによってボスの存在やご主人の浮気などの嘘をついて巧妙にだましている。そういう状況でマインドコントロールされていったのかと。

RKB高田佳明:
最後に、共謀についてです。裁判所は赤堀被告は保護責任者ではなく、保護責任を果たすのは母親の碇被告だとしながらも、不保護を主導したのは赤堀被告だと指摘しました。

宮脇キャスター:
ママ友の赤堀被告と母親の碇被告、事件を主導したのは赤堀被告という認定でしたね

尾上芳信氏:
赤堀被告がいなければこの事件は起こっていません。従って保護責任者は碇被告ですが、それを洗脳しながら家計を握り、食事制限も赤堀被告の指示に従ってこの事件は起こっています。裁判所が赤堀被告の主導を認定しても当然だと私は受け止めています。

◆母親は懲役5年、ママ友は懲役15年
宮脇キャスター:
翔士郎ちゃん餓死事件1審判決の比較です。

RKB高田佳明:
碇被告の判決では、赤堀被告からの支配を認めながらも、碇被告が翔士郎ちゃんを助ける行動は期待可能などとして、懲役5年の判決が言い渡されました。きょうの赤堀被告の判決では裁判所は赤堀被告による支配を認めたほか、赤堀被告が不合理な弁解や碇被告への責任を転嫁しているなどと厳しく指摘しました。

宮脇キャスター:
2人の判決の差について尾上さんはどのように捉えていますか?

尾上芳信氏:
碇被告は自分の罪を認めて反省の態度を公判でも示しています。従って10年の求刑に対して5年と約50%です。赤堀被告は一貫して犯行を否認し、まったく反省の色もなく、しかも主導的な立場ですので、この量刑の差は当然の結果だと思います。

宮脇キャスター:
来月には母親の碇被告の控訴審も始まる見通しですが、今後の裁判をどのように注視していきますか?

尾上芳信氏:
碇被告は10年の求刑に対して5年、ここには情状酌量の中で判決がくだされています。しかし碇被告は量刑不当で控訴したと聞いています。やはり、いくら赤堀被告によるマインドコントロールがあったとはいえ、自分の実の子供の死という結果を招いた責任は重いと考えます。今後、そういう観点も含めてどう公判が推移するか見守っていきたいと考えています。

WACOCA: People, Life, Style.