壊れたおもちゃを修理する「おもちゃの病院」という活動が愛知で行われています。
おもちゃの修理を通じて、「物を大切にする心」を子どもたちに育んでほしいという思いが込められています。

 愛知県春日井市で、月1回開かれている「春日井おもちゃクリニック」。

 次々と持ち込まれるおもちゃを修理するのは、『おもちゃドクター』と呼ばれる人たちです。

 動かない電車のおもちゃを持ってきたのは、石川諒治君(3歳)。

 おもちゃのクリニックに来るのは2回目です。

 分解してみますが、原因がわかりません。

 修理が難しいものは、1カ月間『入院』となります。ドクターはボランティアで、ほとんどは、仕事を引退したシニア世代です。

「できるだけお金をかけずに」ドクターの思い

 電車のおもちゃを修理するのは、電車好きの吉川明さん。

 モーターに原因があるようですが、悩んでいたのはお金でした。

 「モーターを変えたらお金かかるから。できるだけお金をかけずに直ったほうがいいから」(おもちゃドクター 吉川明さん)

 モーターは300円、修理は無料ですが部品代だけは持ち主の負担です。

 モーターから直すことに決めた吉川さん、仲間たちと原因を探りながら修理をしていきます。

 奮闘すること4時間、車輪が動き、あとは車体をかぶせて完成と思いきや、なんと後ろ向きに走り出してしまいました。

 たまにはこういう失敗も、ほかのドクターの笑い声を聞きながら、モーターからやり直しです。

時を忘れて修理「おもちゃを介して親と子が物を大切にするように」

 小学3年生の三崎仁緒ちゃんが持ってきたのは、お下がりでもらった「ミシンのおもちゃ」。

 縫おうとすると、途中で止まってしまいます。

 「バッグやポーチを作りたかった」と言います。

 直らなかったおもちゃは、各自持ち帰って修理します。

 ミシンを担当するのは、代表の加藤智弘さん。

 壊れたおもちゃについて、親子で会話してもらうことは、大切な教育だといいます。

 「ああゆうことすると壊れちゃったよね、もう使えないでしょ、どうするの?次どうしようかということになると思う。おもちゃ病院に持っていいて直るかどうかわからないけど、直してみようかなと、直ったりすると元に戻るじゃないですか、あ~よかったね、今度どうするってことになりますよね。そこでおもちゃを介して親と子が物を大切にするとかなってくると思います」(春日井おもちゃクリニック代表 加藤智弘さん)

 おもちゃを修理して使い続けることは、SDGsの目標「つくる責任つかう責任」にもつながります。

 夜が明けるまで、時間を忘れて直すこともあるそうです。

 モーターの歯車にできた小さなヒビが原因でうまく歯車が噛み合わず、空回りしていたのです。

 「最終決戦みたい。これがごちそうなんでしょうね、きっとね。これじゃんって見つかった時の、あの道が見えた感じ」(加藤智弘さん)

『退院』したおもちゃが子どもたちの元へ

 仁緒ちゃんのもとに、ミシンが戻りました。

 楽しみしていたポーチ作り。

 上手にできました。

 そして、石川諒治くんの元にも、吉川さんが直した電車のおもちゃが無事に直って戻ってきました。

 再開に大喜びです。

 「壊したときに、『おもちゃの病院で直してもらおう』ということを、よく言ってくれるので、壊れたら終わりじゃなくて、直して使おうという気持ちが、生まれてきているのは、いいなと思っています」(石川諒治君の母・弘美さん)

 「嬉しいですよ。せっかくそれで、モーターから直したからお金もかかっていないしね。子どもが喜ぶのが1番うれしいですよね。大事だからね。子どもにとっちゃ。壊れたおもちゃは」(おもちゃドクター 吉川明さん)

親子で一緒に直す「参加型のおもちゃの病院」

 2022年から新たな取り組みを始めました。

 親子も一緒に直す「参加型のおもちゃの病院」です。

 根津芽奈ちゃんは、ぬいぐるみが動かなくなってからも毎日一緒に過ごしていたといいます。

 ずっと席を立たず、「がんばれ!」と修理を見守る芽奈ちゃん。

 ぬいぐるみが動くようになりました。

 「こうやって、人が目の前で大事に丁寧に触っていただきながら、直していただけることを見ることで物を大事にしないといけないなって気持ちになってくれるのかなと思います」(根津芽奈の父・健太郎さん)

 「ちゃんといろんな仕組みがあって、作った人の気持ちがあって、単に大切にしましょうというところだけでなくて、そういうのがわかってもらえるといいかなと思います。将来的にはこういうことに携わってくれる人たちが、増えるといいですよね」(加藤智弘さん)

 芽奈ちゃんは『おもちゃドクター』に「ありがとうございました」と嬉しそうにお礼を伝えていました。

 (8月30日 15:40~放送メ~テレ『アップ!』より)

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