1月16日に東京・新宿のHAL東京 コクーンホールAにて行われた「『超かぐや姫!』HAL東京 特別上映会」の模様をレポートする。
1月22日よりNetflixにて世界独占配信中のアニメーション映画「超かぐや姫!」。その公開に先駆けて行われた本イベントでは、アニメーション制作などのクリエイターを志す学生向けに先行上映を実施。そして、上映後には山下清悟氏(監督・脚本)、へちま氏(ツクヨミキャラクターデザイン)、町田政彌氏(CG監督)、草間徹也氏(CG背景監督)が登壇してのトークショーが行われた。

それぞれが挨拶を行った後は、桃原一真氏(アニメーションプロデューサー)による進行のもと、まずは各々の役割についてトークを繰り広げた。
(写真右から)山下清悟氏、町田政彌氏、草間徹也氏
監督・脚本としてクレジットされている山下氏は、自身にとって初となるオリジナルタイトルということで企画から5年にわたって制作を行ってきたタイトルであることに触れる。実際の制作においても原作がある作品とは異なり、指示やチェックを中心としたディレクションの役割を担っていたという。
その上で、アニメーター出身であることからキャラクターの同一性にはこだわりを持っており、絵の修正に関しては自身で行うケースも。また、音響のディレクションに関しても手掛けているということで、本作の特徴でもある楽曲の数々についても一曲ずつ発注書を書いて要望を伝えていったそうだ。


「学園アイドルマスター」のキャラクター原案などで知られ、本作では作中に登場するインターネット上の仮想空間<ツクヨミ>のキャラクターデザインを手掛けたへちま氏は、オリジナルアニメということで原案から取り組んだことに触れつつ、山下氏とのラリーの中で、手探りな感じもありつつ楽しい仕事だったと振り返っていた。


「アルドノア・ゼロ(Re+)」「オーバーテイク!」などの作品でCG制作に携わるスティミュラスイメージ代表の町田氏は、本作においてはCG監督としてクレジットされているものの、実際には監督をはじめとした数多くのセクションでCGに携わるスタッフは多かったそう。
その上で町田氏が本作において主に担ったのは“監督の変化球にどこまで対応できるか”だったそうで、当初作画で表現する予定だったものをCGに変更したりと、突発的なケースも多かったのだとか。また、忠実なモデリングというよりはデザイン込みで取り組んだとのことで、本作においては通常よりも密度の濃いかたちでデザインし、そこから引き算で調整していく制作手法を用いたことが明かされた。


CG背景監督という立場で作品に関わったキューン・プラントの草間氏は、もともと3Dを活用した背景技術を専門としており、本作でも当初はツクヨミの街並みを作るだけの予定だったという。しかしながら、結果的にライブステージや合戦シーンにおいてもルック開発からカットBGの作成にまで携わることになり、現在の役職になったそう。
同社としても初の試みも多かったそうだが、山下氏曰く、中盤の見せ場である合戦シーンに関しては半径2kmにも及ぶ広大なステージが必要になり、それを表現する上で手描きではコストの観点で難しかったこともあり、好きなだけ動かせる状態にしてアクションを組めるというメリットと合わせ、3DBGを採用するになったとその経緯が語られた。


その後は本編を視聴した学生からのさまざまな質問に回答していった。
本作の企画の成り立ちとこれまでの作品との違い、苦労について聞かれた山下氏は、オリジナルアニメが特に長編での成功が難しい中でチャンスを得たこともあり、自身が持っている映像的な強みをフルで出さないと勝負にもならないと感じていたそう。
これまでのキャリアで手掛けてきた「NARUTO -ナルト-」や「呪術廻戦」などの少年漫画的なアクションだけでなく、自身では純粋なアクション映画よりヒューマンドラマが好きだったこともあり、両者を組み合わせるかたちで考えていった結果、配信者やメタバースという舞台なら設定への理解をキャンセルして入りやすくなり、加えてかぐや姫をモチーフにするというアイデアが生まれ、今回の企画が固まってきたという。
原作がないオリジナル作品ということで自身が表現したいキャラクターや物語にフォーカスすることに対しても、自身がずっとやりたかったことだったため、特に苦労は無く楽しみながら進められたという。あえて言うのであれば、そこからゲームをプレイしたり、ライブをやったりといった要素を加えていく中で、通常の劇場アニメ作品と比べても膨大な物量の2068カットになったことに尽きると話していた。

続いて、キャラクターデザインで一番重視したことや個性を決めるコツについて尋ねられたへちま氏は、本作におけるライバーという特性から、デザインを表現するために引き算を考えないでモリモリで案を出すことを意識したそう。また、実際にあるファッションをベースとした、根拠のあるデザインに落とし込んでいる点にも言及した。
ちなみに、本作の終盤にかけてかぐやが十二単で登場するシーンがあるのだが、当初は踊らないと聞いていたのに結果的にめちゃくちゃ踊っていたことには驚いたそう。そのことに山下氏はおどけつつも、そのシーンが自身にとって泣けるシーンであると話していたので、視聴の際にはぜひ注目してみてはいかがだろうか。


町田氏からは本作でCGが一番活きたと感じるシーンとして、作中の冒頭で登場する“ツクヨミ魚”の開発を挙げた。作品の世界観を表現する上で視聴者の心を掴むキャッチーなシーンにもなるが、デザイン自体は存在しなかったため、監督のイメージをもとに一から作り上げており、結果的に画面の説得力や迫力のある場面になったと振り返る。


仮想空間と日本文化が融合したツクヨミの背景制作で意識したことについて質問された草間氏からは、アニメ美術的な要素とCG感のバランスが挙げられた。安直にテクスチャやライティングだけで作ると馴染みが悪くなることもあり、美術的な部分を注視しながら取り組んでいったそう。
また、ツクヨミでは京都の街並みをベースにした和風建築となっているが、キューン・プラントには建築会社出身のスタッフもおり、描き背景の雰囲気をCGで表現する“スタイライズ表現”をいろいろと開発するなど、こだわって制作したことに触れていた。


ちなみに、今回の登壇者では山下氏が所属するスタジオクロマトがCinema 4D、町田氏のスティミュラスイメージがMaya、そして草間氏のキューン・プラントがBlenderを用いていることが紹介されており、それぞれのツールの行き来の大変さというCG制作環境ならではのエピソードが語られていた。
その後も挙手制でさまざまな質問が寄せられていたが、山下氏は絵コンテを組み立てる上でシステム的に組み込んでおり、カメラワークなどの映像的なアプローチでは3Dを活用してステージとモデルを作って配置しながら考えたりするといった思考的なアプローチが興味深かったほか、中山直哉氏や岩澤亨氏が関わるライブ演出シーン、ヤチヨを海洋生物のイメージでデザインしていること、一般化したVR表現を今風にアップデートし、仮想空間すらも現実であると受け入れる方向にしたこと、作中に登場する武器として「RWBY」の変形武器をイメージしていることなど、さまざま制作エピソードが挙げられた。



そうしたやり取りを締めくくるかたちで山下氏から学生にメッセージとして寄せられたのが、アニメは原作通りに映像化することが求められてくる流れがあるので、オリジナルIPとして作品を作る志を持っていてほしいということ。漫画ではないアニメならではの表現は何かを常に考え続けてほしいと話し、イベントを締めくくった。

「超かぐや姫!」
公式サイト:https://www.cho-kaguyahime.com
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2011年イクセル入社後、Gamerをはじめとした媒体の運営に携わる。好きなジャンルはRPG、パズル、リズム、アドベンチャー(ほぼギャルゲー)。実はゲームよりもアニメが大好きです。
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