※日経エンタテインメント! 2025年11月号の記事を再構成

10月4日から放送中のテレビアニメ『僕のヒーローアカデミアFINAL SEASON』。第1期から監督を務め、第4期からは総監督、劇場版でも監督(4作目はアニメーションアドバイザー)として現場を指揮してきた長崎健司は、アニメ『ヒロアカ』をどのような考えで作ってきたのか。『FINAL SEASON』の注目ポイントから聞いた。

 それぞれの決着のアクションはまさしく総力戦。物語も、画も、アフレコもまだやっていますがみなさん今までの総決算という形で、毎回喉を枯らしてしまうんじゃないかと心配になるくらい全てを込めて演じてくれています。そして音楽に至るまで、これまでアニメが積み上げてきたものの最終形態になっているので、そこは楽しんでもらえると思っています。

 あとは、第6期くらいからは、ずっとヒーローたちは敵〈ヴィラン〉と戦っていて学園要素があまりなかったので、学生らしさが感じられる要素も少し入れていくので楽しみにしてもらいたいです。

 長崎総監督の言う「決着のアクション」とは、主人公デク対死柄木弔と、オールマイト対オール・フォー・ワンによる最終決戦。

 デク(緑谷出久)は第6期あたりから相手が敵〈ヴィラン〉であっても彼らの背景を知りたい、理解したいと考えるキャラクターに変わってきて、死柄木の背景などを汲み取るようになっているところに成長を感じます。初期のような単に“悪いやつをやっつける”ということではなくなっているのでよりカッコいいと思いますし、原作の堀越(耕平)先生もそこは大事にしているので、アニメでも意識して表現しています。

 オールマイトは…言葉として正しいか分からないですが、狂いっぷりがいいなと思います。いい意味で自分がないというか、人のためだけにNo.1ヒーローとして生きている人でしたが、“無個性”(※)としてどう戦うのかとなったときに、彼の異常さが出ているなと。その結末も含め、もう1度ヒーローであるオールマイトが見られてよかったと思います。

※オールマイトは第1話でデクに“個性”を譲渡し無個性となっている。

【POINT 1】ヒーローvs敵〈ヴィラン〉の戦い
決着のアクション

第7期で始まった最終決戦ではヒーローによって敵〈ヴィラン〉側の多くの主力が倒されたが、ヒーロー側もまた多くがその体に深手を負った。残るは、デクvs死柄木弔とオールマイトvsオール・フォー・ワンの因縁の戦い。それぞれの信念を貫く戦いに注目だ。

手で触れるもの全てを崩壊させる個性を持つ死柄木を隔離するために、ヒーロー側が総力を上げて作った天空の棺から出た2人。死柄木を救けたいと願うデクの戦いの結末とは (C)堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会

デクvs死柄木弔

手で触れるもの全てを崩壊させる個性を持つ死柄木を隔離するために、ヒーロー側が総力を上げて作った天空の棺から出た2人。死柄木を救けたいと願うデクの戦いの結末とは (C)堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会

神野事件でヒーローを引退したオールマイトが、オール・フォー・ワンとの長年の戦いに終止符を打つべく再び戦場に。パワードスーツを身につけ教鞭を執る雄英高校1年A組の生徒たちの技を次々と繰り出すオールマイト。その思いを受け継ぐ者とは―― (C)堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会

オールマイトvsオール・フォー・ワン

神野事件でヒーローを引退したオールマイトが、オール・フォー・ワンとの長年の戦いに終止符を打つべく再び戦場に。パワードスーツを身につけ教鞭を執る雄英高校1年A組の生徒たちの技を次々と繰り出すオールマイト。その思いを受け継ぐ者とは―― (C)堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会

 アニメ『ヒロアカ』といえばボンズスタジオによる日本最高峰のアクション映像は欠かせない。そこで積み上げてきたものとは「キャラクター性」だと話すが、この現場が最も強いのは「チームワークができていること」だという。

積み上げてきたチームワーク

 アクションで大事にしているのは、1番はキャラクター性です。『ヒロアカ』は成長する話でそこは僕も大好きなところなのですが、声優さんのお芝居が分かりやすいですが、最初と全然違います。実際10年経っているのでみなさん成長していますし、そこで生まれる声の説得力は長期シリーズでなければ出せないものがあると感じます。

 画に関しても、スタッフみんな『ヒロアカ』のことが好きなのでどんどん素晴らしい画を上げてきてくれます。音楽も林(ゆうき)さんが第7期までに350曲くらい作ってくれましたが、今回もまた新たに良い曲を作ってくれています。安心してお任せできるので、総監督としては楽をさせてもらっています。すごい映像が上がってきた! みたいな(笑)。

 美術もそうですし、音響監督の三間(雅文)さんもずっと一緒にやってきたので、選曲もこちらの演出意図をきっちり表現してくれる。『ヒロアカ』の現場はスペシャリストの集団なんです。堀越先生もアニメチームを信用してくれて、原作者との間もうまくいっているのも心強いです。ですから、10年掛けてチームワークができているのが大きいなと思います。ちょっとやそっとではできないものができている。画や演出のテクニック的な話ももちろんあるのですが、それが1番大きいと思います。

【POINT 2】歴代継承者、クラスメートetc.
キャラクターそれぞれの物語も動き出す

デクがオールマイトから受け継いだ“個性”ワン・フォー・オールの歴代継承者たち(写真上左)。デクのクラスメートの蛙吹梅雨(上右)。ここまで共に戦った者たちにとっても、デクたちの戦いは最後の希望だ。

デクの母親(下左)や以前デクに助けられた少年・出水洸太(下右)をはじめ、一般市民たちも戦況を見守る。ヒーローたちは元の平和な日常を取り戻せるのか (C)堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会

デクの母親(下左)や以前デクに助けられた少年・出水洸太(下右)をはじめ、一般市民たちも戦況を見守る。ヒーローたちは元の平和な日常を取り戻せるのか (C)堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会

 集大成の気持ちはあるかを聞くと、「毎シーズンある」との答え。

 毎回区切りはちゃんとつけて、そこに向かってちゃんといいものを作りましょうと。シーズンごとにベストなものを作るというスタンスなので、それは今回も変わらず。スタッフも分かっているので、粛々とみなさんの力を借りながら制作を進めています。

 そのなかで、オープニングの映像は集大成的なものになるといいなと思いますね。『FINAL SEASON』の主題歌を、まさか(第1期で主題歌を担当した)ポルノグラフィティさんが受けてくださるとは。今映像を作っていますが、第1期の頃を思い出します。

感情とドラマを丁寧に拾う

 10年という長期シリーズとなったアニメ『ヒロアカ』。どんなことを大事に10年を駆け抜けたのか。

 方向性だけはきちんと決めることを大事にしてきました。スタッフはみんなプロフェッショナルですが、シナリオ、コンテ段階でどこが大事で、どこを立たせるかみたいなところですね。あとは色や音の指示。いかに『ヒロアカ』という枠のなかでスタッフの力を引き出せるか、アニメとして面白くなるかを考えるのが仕事だと思っています。

 そのうえで軸にしていたのは、キャラクターの感情を拾う=ドラマを拾うこと。ちょっとした積み重ねで印象やお客さんがどう感じるかが変わってしまうので。

 『FINAL SEASON』では“デクと死柄木のピークをどう持っていくか”を構成の段階からかなり揉みました。今までの積み上げの総決算にふさわしい映像になるよう頑張っています。

 自分自身クリエーターとしてキャラクターの感情をしっかり描くことは大事にしていますし、『ヒロアカ』の魅力でもある泥臭くさくて熱い話やアクションが好きなんです。ですから、監督のお話をもらったときはうれしかったですし、作っていても方向性もテイストも合っているなと感じています。

10月4日から土曜17時30分より読売テレビ・日本テレビ系全国29局ネットで放送中。Hulu、Prime Video、dアニメストア、Netflixなど各配信サイトで配信中 (C)堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会

僕のヒーローアカデミア FINAL SEASON

10月4日から土曜17時30分より読売テレビ・日本テレビ系全国29局ネットで放送中。Hulu、Prime Video、dアニメストア、Netflixなど各配信サイトで配信中 (C)堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会

長崎総監督のテレビシリーズおすすめシーン

第1期<第1話、2話>
「緑谷出久:オリジン」「ヒーローの条件」

(C)堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会

(C)堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会

 “無個性”だった緑谷出久がオールマイトから“個性”を受け継ぎ、ヒーローとしての道を歩み始める物語の導入部分。「ここをちゃんと描けたときに手応えを感じました。“無個性”から“個性”を持つ身になるーーどれだけデクがヒーローに憧れているのかを描けたと思います。あと、ヴィランとの戦いも。学生とヒーローの両軸を最初にやれたのはよかったなと。アニメーターがやる気すぎてすごい画を描いてきたので、それを抑えて調整するのは大変だったなと今思い出しました(笑)」(長崎総監督)。

第3期<第23話>
「デクvsかっちゃん2」

(C)堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会

(C)堀越耕平/集英社・僕のヒーローアカデミア製作委員会

 「爆豪(勝己)の泣くシーンが好きなんです(笑)。爆豪といえば泣くシーンを思い出します。彼は1番分かりやすく変わった。誰よりも強くなりたいという芯の部分は変わってないですけど、いじめっ子キャラとして出てきたのに人を思いやれるようになった。その人間的な成長がいいですよね」(長崎総監督)

長崎健司(ながさき・けんじ)

1979年生まれ、大阪府出身。アニメーション監督、演出家。他監督作品は『No.6』『ガンダムビルドファイターズ』『Classroom☆Crisis』など。今作では、「映像の見せ方は監督に任せている」そうだが、総監督としてシナリオやコンテなどを監督チェックの後さらに長崎総監督がチェック。オールラッシュや音響などにも立ち会い、制作を進めているそうだ

続き:

積み上げてきたチームワーク
長崎総監督のテレビシリーズおすすめシーン

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