2025年10月より放送中のTVアニメ『無職の英雄 ~別にスキルなんか要らなかったんだが~』。本作の物語は、女神から授けられる「職業」と「スキル」が人生を左右する世界が舞台。主人公アレルは、《剣姫》と《魔導王》という強力な血筋を持つ両親の間に生まれるが、10歳になる際に本来授けられるはずの職業が「無職」と判断されてしまう。周囲からは失望と同情の目を向けられる中、スキルを持たない彼は“無職”という烙印と向き合いながら、並外れた努力を重ね、やがて天賦の才をも凌ぐ力を得ていく。
今回、本作の原作を手掛ける九頭七尾にメールインタビューを実施した。「小説家になろう」でのウェブ小説に飛び込んだきっかけ、主人公アレルをはじめとする世界観構築の裏側、そして驚きと疑いから始まったアニメ化の心境を伺った。
努力で英雄になる物語を
――本作を「小説家になろう」で発表しようと思ったきっかけを教えてください。
本作を「小説家になろう」で発表しようと思ったというより、「小説家になろう」で発表するためにゼロから本作を書き上げました。
実は元々、新人賞を受賞してデビューしているのですが、その時期がちょうど「小説家になろう」の書籍化作品がヒットを連発させ始めた頃でして。企画書を編集部に出して新作を立ち上げるというルートもあったのですが、自分もこのビッグウェーブに乗った方がいいのではと考え、思い切ってWeb小説の世界に飛び込みました。
ただ、それまでずっと新人賞向けの作品しか書いてこなかったため、最初はかなり苦戦しました。一冊を通して面白さを届けることを意識すればよかった新人賞向けの作品と、連載スタートから早い段階で読者に面白いと思ってもらう必要があるWeb小説では、やはりストーリーの作り方が大きく変わってくるからです。
そうしたWeb小説特有の書き方に慣れるまで少し時間がかかりましたが、試行錯誤を続けたことで、この「無職の英雄」は上手くアジャストでき、ランキングを一気に駆け上がったのを覚えています。
――主人公アレルをはじめ、職業やスキルという世界観を構築する上で大切にしたポイントは何でしょうか。
無職という職業を授かってしまった主人公アレルが、努力によって自力でスキルを身に着けながら、英雄的な活躍をしていく…というのが本作の肝であり要です。なので、あらゆる職業もスキルも都市も、すべてその部分を活かすことができるように構築していきました。
例えば、職業には【基本職】【上級職】【最上級職】【超級職】の四段階あるのですが、当初は三段階にするつもりだったんです。ぶっちゃけ四段階もあるとややこしいですし…。ただ、アレルの凄さや活躍ぶりを際立たせるためには、どうしても四段階ないとダメだと思い、追加することにしました。
というふうに、いかに主人公であるアレルの活躍を描くのかという観点から、すべての設定や世界観を構築していった形です。
――アニメ化が決定したときのお気持ちはいかがでしたか?
驚き半分、嬉しさ半分…と言いたいところですが、実際には驚き半分、疑い半分でした(笑)。え、ほんとに? 何かの間違いでは、と。しかしどうやら本当だったようで、徐々に嬉しさが追いついてきました。
ただ、いやここからポシャることもあると聞くし、なんやかんやあってお蔵入りになるかもしれないし…などという考えが頭の片隅で滞留し続け、つい最近までアニメが放送される未来を完全には信じ切ることができませんでした(笑)。こうして無事に放送まで漕ぎつけることができて本当によかったです。
――アニメ化をするにあたって、原作者としてこだわったポイント、スタッフへオーダーしたことはありますか?
実は、原作者として特別に強くこだわったというポイントはほとんどありませんでした。もちろん初めてのアニメ化です。失敗はしたくないし、細部まで妥協したくないという気持ちもありました。ただ、作家はアニメについては門外漢ですし、小説とアニメではやはり勝手が違います。頓珍漢なオーダーをして、アニメスタッフの方々を困らせてしまうかもしれません。
なので、細かい注文は出さず、基本的にはアニメスタッフの皆さんに委ねることにしました。アニメならではの演出や動きが加わることで、物語がまた違った輝きを見せてくれるのではないかという期待もあってのことだったのですが、結果的にこちらの想像を大きく超える形で表現していただけて、とても感謝しています。
――創作を続ける上でご自身が大切にしているこだわりや姿勢について教えてください。
商業作家として、やはりちゃんと売れる作品を出したいと思っています。一つの作品を世に出すために編集部の皆さんをはじめ大勢の方々が関わっていますし、売れなければ当然赤字になります。そして売れなくて打ち切りになると、せっかく面白いと思ってくれた読者さんも続きを読むことができなくなってしまいます。商業の世界でやる以上、「自分の本を世に出せた! やったぜ!」という自己満足だけではダメだと考えています(それだけではダメという話で、もちろん自分が満足するのもすごく大事です)。
実は私、今年がちょうどデビューから10周年でした。新人賞を受賞したときの同期の多くが一、二年でフェードアウトしていく中、ここまで生き残ることがでたのは「これからは間違いなくWeb小説の方が売れる」と考え、前述の通りWeb小説の世界に躊躇なく飛び込んだのも大きかったと思っています。
などと偉そうな言いつつ、実際に売れているのはノベルよりもコミカライズされた漫画の方ばかりなのですが…汗。お世話になっている漫画家の皆様には足を向けて眠れません!
――アニメを楽しみにしている読者・視聴者へのメッセージをお願いします。
先ほど「無職という職業を授かってしまった主人公アレルが、努力によって自力でスキルを身に着けながら、英雄的な活躍をしていく…というのが本作の肝であり要」だと書きましたが、何の才能も与えられなかったアレルが一体どこまで強くなっていくのか、ぜひ多くの方々に観ていただきたいなと思います。
また、そうした熱い感じのストーリーもありつつ、同時にこの作品はコメディだと個人的に思っていまして。ちょっと頭のネジが数本外れた主人公アレルの言動や、そんな彼を取り巻く個性的なキャラたちとのやり取りなども、ぜひ楽しんでいただきたいです。
放送・配信情報
<放送情報>
2025年10月より放送
TOKYO MX:2025年10月1日(水)より毎週水曜22時00分 ~ 放送開始
BSフジ:2025年10月2日(木)より毎週木曜24時30分 ~ 放送開始
AT-X :2025年10月6日(月)より毎週月曜22時30分 ~ 放送開始
※リピート放送 毎週水曜10:30~/毎週金曜16:30~
<配信情報>
dアニメストア・ABEMA・U-NEXT・アニメ放題:
9月24日(水)より毎週水曜22時00分~地上波1週間先行・最速配信
その他配信サービスでも順次配信予定
©九頭七尾/アース・スター エンターテイメント/無職の英雄製作委員会