陸上の世界選手権東京大会は13日から国立競技場で熱戦が繰り広げられている。2007年の大阪大会以来18年ぶり3回目の日本開催。現地で取材する「THE ANSWER」では、選手や競技の魅力を伝えるほか、新たな価値観を探る連載「東京に集いし超人たち」を届けていく。第2回は「世界で戦うメンタリティ」。14日の男子100メートルで銅メダルに輝いたノア・ライルズ(米国)は大のアニメ好き。日本のアニメから学んだ考え方が、いかに競技に役立っているかを聞いた。(取材・文=THE ANSWER編集部・鉾久 真大)

男子100メートルのメダリスト会見で熱弁するノア・ライルズ【写真:中戸川知世】男子100メートルのメダリスト会見で熱弁するノア・ライルズ【写真:中戸川知世】
東京世界陸上連載「東京に集いし超人たち」第2回

 陸上の世界選手権東京大会は13日から国立競技場で熱戦が繰り広げられている。2007年の大阪大会以来18年ぶり3回目の日本開催。現地で取材する「THE ANSWER」では、選手や競技の魅力を伝えるほか、新たな価値観を探る連載「東京に集いし超人たち」を届けていく。第2回は「世界で戦うメンタリティ」。14日の男子100メートルで銅メダルに輝いたノア・ライルズ(米国)は大のアニメ好き。日本のアニメから学んだ考え方が、いかに競技に役立っているかを聞いた。(取材・文=THE ANSWER編集部・鉾久 真大)

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 決勝のスタートラインに立ったライルズは、両手を天に高々と伸ばした。「ドラゴンボール」の主人公・孫悟空の必殺技「元気玉」のポーズだ。3着でゴールした後には国旗をまとい、お馴染みの「かめはめ波」も披露。メダリスト会見では「日本が大好きだし、日本から大きな愛を感じている。それはとても光栄なこと。今日はファンに向けて多分70回はかめはめ波をしたよ」と満面の笑みを浮かべた。

 世界の舞台で戦うためには身体面はもちろん、精神面の強さも必要になる。アニメを通して学んだメンタリティはあるのか。これまで何度も日本のアニメ愛を公言してきたライルズに尋ねると、身振り手振りを交えた熱弁が始まった。

「もちろんさ。不屈の精神、困難な時を切り抜け、悲しみを乗り越えようとすること、愛、インスピレーション……全てがそこにあるんだ。『アニメ』という言葉を聞いた時に、『ああ、一時の流行だろ』と思う人もいるかもしれないが、それは違う。アニメは一つの媒体なんだ。物語の伝え方の一つ。本を選ぶようなものなんだ。

 フィクションが好き? ホラーが好き? ノンフィクションが好き? そこには全てがある。伝説的な作品たちを見ていると、『ワオ、そんな風に考えたことなんてなかった』となる時があるんだ」。ものの見方すらも変えてしまう物語の力。28歳の“アニメオタク”は実際に英語で真似をしながら、「ワンピース」の主人公モンキー・D・ルフィの決め台詞を一例に挙げた。

かめはめ波ポーズを決めるライルズ【写真:中戸川知世】かめはめ波ポーズを決めるライルズ【写真:中戸川知世】

「数多くのアニメの中で、俺が思う最高の台詞はワンピースの第1話に出てくる。ルフィはこう言うんだ。『海賊王におれはなる!!!!』って。みんなはそれを笑う。でも、そのメンタリティをやること全てに持ち込んでいるんだ。

『お前にはできない』って誰が思おうが構わない。達成できるか否かを誰がどう考えようが関係ない。失敗しようが死ぬ気で努力しようが、自分自身がそれを信じることが全て。信じれば信じるたびに、もっともっと強くなれるんだ」

 3冠を達成した2年前のブダペスト大会。ライルズはこの時のメダリスト会見でも「ここにいるのは3人の本当に自分のことを信じてきた男たち。自分の夢を、成し遂げたいことを心から信じていれば、それは叶うという証明だ」と力説していた。

 バカげた理想だと人は笑うだろうが、結構じゃないか――。そんなメンタリティでありったけの夢を追い続けたものだけが、最果ての地にたどり着ける。

(THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro Muku)

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