ペリリュー島を訪れ、零式艦上戦闘機の残骸に見入る板垣李光人
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 俳優の板垣李光人(23)と中村倫也(38)が、アニメ映画「ペリリュー―楽園のゲルニカ―」で声優を務める。太平洋戦争で、4万人の米軍に対し1万人の日本軍が立ち向かったパラオ南西部・ペリリュー島での過酷な戦いと、その後終戦を知らずに2年間潜伏し生き残った34人の兵士たちの物語。板垣は亡くなった仲間の最期の雄姿を書き記す「功績係」を命じられた田丸均、中村は相棒の吉敷佳助の声を担当する。

 武田一義氏による同名漫画が原作で、登場人物は3頭身の愛らしいキャラクターながら、リアリティーを追求した描写で戦闘の悲惨さを表現。主演の板垣は「終戦80年という節目にこの作品に携わり、田丸均という役に命を吹き込むことができる運命には非常に大きな意味と責任を感じています」と真摯(しんし)に語る。

 今年4月にペリリュー島を訪れ、零戦の残骸など至る所にある戦争の傷痕を目の当たりにした。兵士には同世代の若者も多く「彼らの青春や人生に思いをはせると、とても人ごととは思えません」と悲痛な思いを吐露した。さらに「教科書やテレビ、ネットからは感じることのできない、ここで確かに苛烈な戦いが繰り広げられ、たくさんの方がさまざまな思いとともに命を落とされたのだと強く実感した」という。

 その上で「田丸なりの、激しくも繊細な葛藤や感情を大切に描いていきたい」と、アフレコに向け気持ちを高めている。対する中村も「太平洋戦争後のさまざまな場所で、終戦を知らず潜伏を続けていた日本兵がいたことは知っていましたが、原作に触れてこんなにも生々しくその日々を感じたことはありませんでした」と心を奪われた様子。「当時を伝えられる人も減ってきている中で、この作品を通して多くの方がペリリュー島の日々を感じてもらうことはとても意義のあることだと思います」と訴えている。

 今年は戦争映画が多く「ペリリュー」はそのトリを務める形で12月5日に公開される。

 ◇ペリリュー島の戦い 太平洋戦争で日本の戦局が悪化していた1944年(昭19)9月15日から、約2カ月半繰り広げられたペリリュー島での戦い。米国がフィリピン奪還の拠点にする目的で開戦。日本軍はこれまでの一斉突入で玉砕する“バンザイ突撃”を禁じられ、持久戦で時間稼ぎを命じられた。米軍は1600人以上が死亡したとされる。現在でも1000を超える日本兵の遺骨が収容されず島に眠っている。

○…戦後80年の節目となる今年は、戦争をテーマにした映画作品が続々公開されている。1日に公開された「長崎―閃光の影で―」は原爆投下後、負傷者を救おうと奔走する若い看護学生たちを描き、長崎出身の福山雅治が主題歌をプロデュース。自身の楽曲「クスノキ」を同映画のためにアレンジした作品を、主演の若手女優3人が歌唱している。15日公開の「雪風 YUKIKAZE」は実在した駆逐艦が舞台。主演の竹野内豊のほか、玉木宏、中井貴一ら重厚なキャストがそろう。

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