「J-POPは、ずっと飾る写真みたいなもの」
―歌に関しては、東京ガーデンシアターでのワンマンを経て、自分のどういう歌声が人に届くのかという探求がまた一歩深くなったのかなと感じました。
Aile The Shota:☆Takuさんからのディレクションがあったのは、メロディやリリックもそうなんですけど、一番は歌に関してでした。ちょうどワンマンに向けてりょんりょん(ボーカルトレーナー・佐藤涼子)と発声の新たな正解を作ろうとしている中で、「あんたは優しすぎるからもっと声を出して」とか言われていたんですけど、このレコーディングのときも最初は優しく歌っていて、☆Takuさんからも同じように「もっともっと」っていうディレクションをもらって。J-POPを聴いていると、「声の強さ」みたいなものが共通してあるのかなって思います。歌声の重心とかは「キャッチー」に繋がるんだなって。
―最近は「サビがバズらない」とかも言われるけど、そんなことまで言われると、いよいよ「J-POPとは何だ?」ってなりますよね。
Aile The Shota:「今Aメロがバズるからね」っていうのは、毎回セッションで1回は話に出る気がする。でも俺はいいサビを作ることにこだわり続けたいです。そうじゃないと歌っていて楽しくないので。自分がハンドマイクを持って、その曲を流したときに気持ちいいかどうかが、ジャッジの基準ですね。僕が作る音楽は自分が納得した状態で人に渡したいので、時代とは戦い続けなきゃなと思ってます。
―トラックにギターを入れたい、となったのはどういう発想からだったんですか? ギターが入ることで、より「平成ポップス感」というか、キマグレンなどとも接続するようなJ-POPになっていますよね。
Aile The Shota:ギターがないとダメでしょ、みたいな。「夏のポップスといったらギターがほしいよね」ってなって。それこそDREAMS COME TRUE、サザンオールスターズ、flumpoolとか、俺が聴いていたJ-POPは生楽器なので、やるなら生がいいなって。あと、バンドが作るJ-POPも好きなんですよね。最近だと、マルシィ、シャイトープとかも好きだし。ライブでバンドと一緒にやる時間が増えていることもあって、当たり前に打ち込みの時代になってきている中で、生の楽器が入ることによって開くものが多いことに気づいたタイミングでもあったというか。ダンスミュージックを作るなら打ち込みでやりきるのもいいと思うんですけど、Aile The Shotaでポップスを作るとなったら生楽器が必要だなって気づきました。「AURORA TOKIO」「Yumeiro」「FANCITY」とかが人気の理由も多分それだと思う。打ち込みがいい悪いというよりも、生楽器が入っているものはリアクションも刺さる層も変わることに気づいたかも。
―ミュージックビデオには、『オフライン ラブ』でも話題の島村雄大さんが出演しています。これはどういう理由だったんですか?
Aile The Shota:実は昔から友達で。
―へえ!
Aile The Shota:共通の知り合いが誘ったことがきっかけで、僕のファーストワンマン(2023年7月2日、KT Zepp Yokohamaにて)を見に来てくれていて。その直後に何回か飲んだりしました。ちょうど「向日葵花火」を書き終えて、時間ができたときに『オフライン ラブ』を見たんですよね。映像の中の彼とプライベートの彼はまったく一緒で、「やっぱりいいやつだな」とも思ったし、もどかしい部分が自分と重なったりして。めっちゃいいやつで、めっちゃ可愛いからこそ、「こいつ、ここ大変なんだろうな」とかもなんとなくわかる。とにかく『オフライン ラブ』を見終わったあとにまた雄大と会いたいなと思ったし、雄大にこの曲を聴かせたいなと思って。実際に会って聴かせたら、その場で彼は涙を流したんです。大事にしている仲間とクリエイティブを作ることは僕の軸でもあるし、この曲を聴きながら街を歩いていたときに頭の中で浮かんだ映像に雄大のハマり方がすごくよかったので、その場で「MVに出てほしいんだけど」って言って、後日しっかりオファーして、というのが彼に出てもらった経緯です。友達にオファーする感覚でクリエイティブできると、みんなの思い入れのある作品になるので、大成功だったなと思います。
―めちゃくちゃ素敵な経緯ですね。
Aile The Shota:あのビデオの雄大の顔、やばいですよね。曲の主人公と雄大が重なる部分をそのまま表現してくれればいいから、あまり演技をして作り込まないでほしい、という話もしました。ビデオを作って、やっぱりこの尺とこの展開にしてよかったなって改めて思いましたね。ドラマを見ているような気分になれるので。毎回MVでは全部リアルにするために細かい部分を気にしているんですけど、彼女役の(牧野)真鈴ちゃんが持っている携帯のメモとかもとことんリアルであってほしいから、絵文字の使い方までこだわりました。めちゃくちゃ恋がしたくなるビデオを作れてよかったなと思います(笑)。

―「SAKURA」「さよならシティライト」「踊りませんか?」とかもそうですけど、俳優を使ってストーリー仕立てのミュージックビデオを作るのは、どういう考えからですか?
Aile The Shota:曲を自分事から手放すための手段かなと思います。ずっと自分が表現していると僕の物語として映っちゃうから。でもそれで言うと、今回はドラマシーンがちゃんとあの尺感であるからこそ、自分のリップシーンはカメラへの強いアプローチとかも含めて、自分事として表現できました。ビデオも含めて、この曲は満足度が高いですね。

―曲にしろ映像にしろ、平成やY2K要素を持ってくる理由が、「最近流行ってるから」とかじゃなくて「自分のルーツだから」というのがすごく大事な気がしますね。
Aile The Shota:そう、僕にとって一番素直なルーツがJ-POPなので。ずっと飾る写真みたいなものって、J-POPなんだよなあ。人生にとって忘れられない曲になるポテンシャルが一番高いのは「いい曲」で、これまでは身体を踊らせる曲をいっぱい作ってきたけど、その中で心も動くものを大事にしたいなと思います。そう思うのはDREAMS COME TRUEの影響ですね。ライブで「何度でも」が流れたときに、「この曲にこんなにも多くの人が救われているんだ」みたいな空気感が起きることを感じるんですよ。自分が好きな時代のJ-POPにフィーチャーして、それをリバイバルさせるじゃないけど、日本の音楽シーンにおいてしっかり大きくしたいなと思います。

―J-POPには、この国に住んでいる人を救う力があるはずで、そういう力のある音楽を今の時代に生み出したいということですよね。この先でいうと、秋と冬の曲で、どこまでAile The Shotaの存在感を大きくしていくかが大事になってきそうですか?
Aile The Shota:そうなんですよね。でもこういうポップスの生み出し方になっていくと思う。時代に迎合しない、ただ時代に寄り添う。全然TikTokも意識してないし、SNSに迎合しないけど、「今の時代ってこういう言葉がほしいんだろうな」とかは考える。秋の曲とかは、「愛とは」みたいな、ラブソングがより広義になる感じがします。今年はBMSGが5周年だからこそ、めちゃくちゃ個人的なことばかり考えるタイミングかなと思っていて。
―それはどういう意味で、ですか?
AIle The Shota:『THE LAST PIECE』(現在BMSGが開催中のオーディション)は、彼らだけのものじゃない感じがする。『THE FIRST』のストーリーも完結するのが今回のタイミングで、僕らも最後のピースを、それぞれの形で見出すタイミングかなと思います。だからポジティブに「何をやろうかな?」って思ってます。やらなきゃいけないこと、やりたいことがめっちゃあって。でもそれもナオト(・インティライミ)さんに「30歳に向けて、やれることとやりたいことが重なってくるよ」って言われて、なんとなくそうなっている実感があるので、すごく元気をもらいました。オーガナイズイベントも積極的にやっているし、いろんな場所にAile The Shotaの居場所ができつつあるので、しっかり研ぎ澄ましていけるといいなと思ってます。考える要素も、妥協できないポイントも、増え続けているから大変で。だからソングライティングキャンプみたいに「1日5時間で曲を作る」とかがデトックスの感じではありました。どれだけ真摯にポップスを作るとなったとしても、生みの苦しみを味わうのは大事ですけど、音を楽しむというマインドは忘れずにいたいですね。

Digital Single
「向日葵花火 (Prod. ☆Taku Takahashi)」
Aile The Shota
配信中
https://orcd.co/ats_himawarihanabi
