今後は皆で『アイマリンプロジェクト++』の世界観を作っていくことになる

――そして、2020年には2.8次元アイドルをコンセプトとした“新章アイマリンプロジェクト”へ。
内田彩:ここで物語としての深みが一気に増したんです。「ストーリーがあって、世界観があって、設定がある」。それを楽曲で表現していくという、新しい挑戦が始まりました。
WEB小説が用意されて、水晶宮という舞台もVRChat上に作られて。“メディアミックス”どころか、いろんな次元を超えた融合を目指す作品になりました。ひとつの作品をキャストの皆さんと監督とともに広げていった先に今回の『アイマリンプロジェクト++』があります。
――ストーリーをもとに世界観を固めていったこの5年間は、“実験”の連続でもあったんですね。
内田彩:このプロジェクトは、リアル空間だけではなくて、デジタル空間と交わっていくメディアミックスだったので、すべてが新しいことの挑戦でした。ちょうどVTuber文化が広がってきた時期とも重なって、時代の最先端を体験している感覚が、本当に面白くて。
――今回のようなデジタル×フィジカルの融合プロジェクトは、演じる側からすると難しさもあるのでは?
内田彩:ありますね。私は今まで声優としてフィジカルの部分をたくさんやってきたので、フィジカルには自信があるんですけど、デジタルでの活動はまだ手探りで。例えば、今活躍されているVTuberさんたちはそれぞれにキャラクターとしての設定がありつつも、めちゃくちゃ自由に喋っていますよね(笑)。おめがシスターズさんとコラボさせてもらったことがあるんですけど、すごく自由で面白くて。
でもアイマリンは、ちゃんと小説の中での設定があるキャラクターだから、変なことを話しちゃうとその世界観が崩れちゃうんじゃないかと思っていて、本当は、「今日ラーメン食べてきた!」と言いたくても、先に「あの世界にラーメンはないかもしれない」という考えが頭をよぎったりする。どうしても“役者脳”で行動してしまう自分がいるんです(笑)。
――世界観がしっかりしている分、フラットな振る舞いができるVTuberさんたちとはまた違う立ち位置にいるというか。
内田彩:でも最近、少しずつその意識が変わりつつもあるんです。実は佐伯ちゃんがVRイベント内で会話している最中の発言がきっかけで自然と決まっていったキャラクターの設定もあったりするんですよ。例えば、「イチカは食いしん坊」とか(笑)。それがリアルからフィジカルへと取り込まれていく様子に気付いたときからは、「気負わずに話してもいいんだな」と思えるようになりました。『アイマリンプロジェクト』はストーリーの世界観の設定こそ決まっているけど、意外とキャラクターの設定は少し曖昧なところがあるというか。今回発表された「自由機甲楽団」というファンクラブの団員も含めて、今後は皆で『アイマリンプロジェクト++』の世界観を作っていくことになるんだろうなと思います。
――ステージ上で初公開された新曲「M.A.D.」では、ヒップホップという新たなジャンルに挑戦されましたね。
内田彩:今、アイドルの方たちでもすごくかっこいいヒップホップをやっていらっしゃるじゃないですか。そういった楽曲を普段から聴いていたので、「ついにアイマリンでもこのジャンルをやれるんだ!」という嬉しさもありました。
『アイマリンプロジェクト』の“作品”としての存在感は、アニメや映像を超えたところにあると思っているので、「この曲なら戦える!」と感じられるかっこいい歌声を披露したい気持ちが強かったです。
――キャラクターソングというより、もっと一歩踏み込んだ“音楽”としてのクオリティが求められている、と。ストーリーに合わせて曲の持つ意味も深くなっている気がしますね。
内田彩:今回からガラッと変わって、ストリート感のあるダークな印象になりましたし。泥臭く生きていく中での強い気持ちとか、絶望の中にある光を歌っている。そういう人間味のある表現が好きです。
――不思議と、デジタルが舞台の世界観だけど、妙に“人間らしさ”が伝わってきます。泥臭く生きる中での反骨精神など、人間より人間らしいというか。
内田彩:まさに。アイマリンとイチカはAIで、他のメンバーも、もともと人間だった人たちがAI化されているという設定なんですよ。人間じゃないけど、だからこそ、どこか“今の自分”の自然体に近い感覚で歌える。熱いものを表現できる。そこがすごく好きですし、やりがいを感じているところかもしれません。
――キャストの皆さんが、MVの公開中、あるキャラクターのダンスパフォーマンスを絶賛していましたが、印象に残っているのは、やはり?
内田彩:イサナのブレイクダンス ですね(笑)。私も過去に2曲ほど、モーションキャプチャーでキャラクターの動きを表現させていただいたことがあるので、動きのすごさとか難しさがわかるんです。あのブレイクダンス、実際にはダンサーさんが、モーションキャプチャーで実演していて。まさか、あんなに激しいブレイクダンスまでが取り込めるなんて! とすごすぎる技術の力に驚くばかりでした(笑)。
それから、フードを被った群衆の存在もあって、「我々は一人じゃない」というテーマが全体を通して際立っていているのも良かったです。今までは我々が作った世界を見てもらう形だったんですけど、今回からは皆が「自由機甲楽団」の視点で没入できるようになっていて。
いつもプロジェクトが先端を行きすぎているんですけど、それでも毎回ちゃんと形になっていくのがすごい。だからこそ、乗り遅れないように、これからもついていかないとって思っています。
「M.A.D.」Official Music Video「アイマリンプロジェクト++」vol.1
リリース情報

シングル「M.A.D.」
アイマリンプロジェクト++
2025/4/28 DIGITAL RELEASE
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