【モロッコ紀行〜光と音の輪】

闇に浮かぶ無数の光。泡のようにいくつも生まれては消える音楽とダンスの輪……。マラケシュにあるジャマ・エル・フナ広場での混然とした光景を見たときの、体の芯を震わせるような感動は、忘れることができません。

もともと処刑場だったというこの広場、今では観光名所であるとともに、地元の人々の交流の場となっています。昼はだだっ広く味気のない場所ですが、夕方になると屋台の荷車を引いた人々が続々と集まりだし、そこかしこで大道芸がはじまり、夜が更けるにつれてどこからともなく音楽が聞こえてくるのです。

広場に着くまでにずいぶん苦労しました。狭く暗い複雑な小道を右へ左へ曲がらねばなりません。Google先生も頼りにならず、あっという間に迷子に。途方にくれていると「ジャマエルフナだろ?俺についてこいよ」とストリートキッズが勝手にガイドをし始めました。おそるおそる彼らについて歩き続け、暗闇に浮かぶ無数の光を目にした瞬間! その喜びは筆舌に尽くしがたいものでした。

広場には数多の屋台がぎっしりと軒を並べ、いい香りを含んだ湯気がたちこめています。特に賑わっている屋台に入り、地元のお客さんたちと一緒に右手でホブス(モロッコのパン)と甘辛く煮た牛肉をいただきます。ん~美味!「東京からきたの?」「ゲイシャ、ラクダ、サムライ?」と声をかけられつつ完食です。食後に甘~いミントティーを堪能したら、いざ、音楽の輪へ!

輪のなかでは地元の人々が鍋のような金物を打ち鳴らし、笛を吹き、歌い、踊り……。動画をごらんください。

こんな小さなライブが、あちこちで繰り広げられています。最初は眺めているだけでしたが、だんだん楽しくなり、気づいたらリズムにあわせて体を揺らす自分がいました。ひとつの輪に加わったら、次の輪へ。人々の熱気と、光と、そして音がぶつかりあい、広場全体がものすごい熱量で沸いています。しかもこれ、毎晩行われているそう。毎日がフェス状態です。国籍や人種、宗教も関係ない。その輪に加わればみんなが笑顔。広場の治安は年々悪化しているとも聞きますが、その場は、綺麗ごとなしに間違いなく“PEACE”なムードに満ちていました。こんなふうに、幸せな輪が世界でもっと広がればいい……。世界情勢が不安定な今こそ、そう願ってやみません。(編集I)

#morocco #marrakish

 

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