【念願の香りに満たされて】

初めての出合いは、セリーヌの展示会。フィービーが作り出す新たなデザインをすべてこの眼に焼きつけようと夢中でメモをとる傍ら、どうしても気になって気になって、いやはや気になって仕方がない。それは会場中に広がるアーティスティックな香りでした。“心地よい”では物足りない、“上品”では当たらずとも遠からず。まさに“芸術的”という表現が言い得て妙な芳香。今までにない恍惚感が脳髄に染み渡りました。
香りの根源を探し当てるべく辺りを見回していると、重厚な深緑のグラスに揺れる一筋の炎を発見。その正体は、ヴァレンティノとのコラボレーションも記憶に新しい 、17世紀創業のフランスの老舗キャンドルメーカー CIRE TRUDON でした。目にした瞬間すかさず裏のシールに記載された「MADELEINE」の文字を写真に収めました。そして、必ずや見つけ出してみせる!と心に誓ったあの日から数ヶ月、遂に感動の再会が実現したのです。
今週火曜日から、神宮前にあるギャラリー Graphpaper でCIRE TRUDONのポップアップが開催されるとの情報を嗅ぎ付け、初日に行ってきました。荘厳なゴールドのエンブレムを配したキャンドルが誇らしげに並ぶ空間は、思わず手と手を合わせたくなるような神聖さが漂います。20種類近く用意されたキャンドルに加えて、置いておくだけでほのかに香るセンテッドマッチやフレグランスなどバリエーションも豊富。いつもなら確実に迷ってしまうところですが、今回は目当ての「MADELEINE」を即決購入しました。
はやる気持ちを抑えながら仕事を済ませ、足早に自宅に帰って火をともすと、部屋中があの時の展示会会場と同じ香りに包まれました。やっと出合えた感動に胸を熱くしながら、これで私もセリーヌ・ウーマンに近づいただの、ビッグメゾンと同じ香りを共有しているだの、拡大解釈の連鎖に酔いしれながら一夜を過ごしました。

ところで、CIRE TRUDONのキャンドルは全ての香りにストーリーがあります。今回購入した「MADELEINE」は、ゴーチェの小説『モーパン嬢』の主人公である男装の麗人、マドレーヌ・ド・モーパンへのオマージュ。アイリス、ジャスミン、ローズの麗しい花びらをレザーのきりりとした輪郭で包み込む、華やかさとクールさが同居する香りは、馬でさっそうと駆け抜けるマドレーヌの大胆で勇敢な精神を表現しています。それは奇しくもフィービーが描くパワフルで芯のある女性像とも絶妙にリンクする。それとも、あの時展示会で使われていたのは単なる偶然ではなく、あえてこの香りが選ばれたということなのだろうか。そんなことに思いを馳せながら、狭苦しいひとり暮らしの部屋を魅惑の薫香で満たしています。

CIRE TRUDONのポップアップは、Graphpaper にて12月6日までの開催です。300年以上も愛され続けるキャンドルの魅力に触れてみてください。(編集H)

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