カナダ・モントリオールで開催されているWTA1000大会「ナショナル・バンク・オープン」で、日本の若手女子テニス選手・伊藤あおい（21歳）が歴史的な快挙を成し遂げた。世界ランキング110位の伊藤は、29日（日本時間30日）に行われたシングルス2回戦で、同ランキング9位、今大会第7シードのジャスミン・パオリーニ（イタリア）を2-6、7-5、7-6（7-5）のフルセットで破る大金星を挙げた。この勝利により、伊藤はWTA1000大会で自身初となる3回戦進出を果たした。
伊藤にとって、この大会は本戦初出場であり、まさに挑戦の場であった。予選ではわずか1試合に勝利し、本戦出場権を獲得。1回戦では同じく予選を勝ち上がったアメリカのK・ヴォリネッツ（世界108位）をストレートで下し、2回戦に進出。そこで対戦したのが、29歳で経験豊富なパオリーニだった。
試合序盤はパオリーニの地力が発揮された。第1セットは伊藤がいきなりブレークに成功するも、その後は3度のブレークを許して2-6で落とした。しかし、第2セット以降は伊藤の強さと粘りが光る。第4ゲームでブレークを奪われる苦しい展開から、第7ゲームでブレークバック、さらに第11ゲームでもブレークを重ね、見事7-5でセットを奪い返した。
最終セットは両者譲らぬ攻防が続き、互いに4度ずつブレークを奪い合う白熱の展開となった。そして迎えたタイブレーク。伊藤は積極的なネットプレーと冷静な判断力を発揮し、7-5でタイブレークを制して劇的な勝利を飾った。
試合後の伊藤は、大きなリアクションを見せず、小さくガッツポーズを見せるだけの静かな喜びを表現した。まるで「ここがゴールではない」と語るかのようなその姿は、次なるステージへの覚悟と自信を感じさせた。
この勝利は、伊藤にとってだけでなく、日本女子テニス界全体にとっても希望となるニュースである。長らくエースとして活躍してきた大坂なおみの後を継ぐ若手の存在として、伊藤の名前が広く知られるきっかけとなったのは間違いない。
また、パオリーニ自身も試合後、「彼女はとても落ち着いていた。若いのに、驚くほどの集中力と冷静さを持っていた」と伊藤を高く評価。この言葉は、伊藤のテニスが世界基準に近づいている証でもある。
今後、伊藤は3回戦でアメリカの第26シード、アリシア・クルーガー、もしくはスペインのホセフィーナ・ブザス・マネイロ（世界ランキング51位）と対戦することになる。どちらが相手になっても格上ではあるが、今回の勝利が伊藤にとって大きな自信となり、さらなる飛躍へとつながるだろう。
伊藤あおいの戦いは、まだ始まったばかりである。その成長と挑戦の姿は、日本中のテニスファン、そして未来のアスリートたちに大きな勇気と感動を与えている。今後の活躍に、ますます注目が集まる。
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