@落語 #風刺 #国分太一#トミーズ#前田敦子「ハラスメント問答」「ヒロイン願望問答」
「ハラスメント問答」
えー、近頃じゃ、何かっちゃ「ハラスメント」っつってね、何を言っても、何をやっても、誰かが「それ、ハラです」って言やぁ、こっちは即アウト。もう、口開くより先に弁護士つけなきゃいけない時代でございます。
でね、先日、ちょいとした集まりで、芸人連中がガヤガヤしてるとこに、あの“トミーズ雅”ってぇおっさんが来たんですよ。関西じゃ知らない人はいない、元・プロボクサーで、ツッコミのつもりで人を殴るというね、もうハラスメントのパイオニアみてぇな男でさ。
その雅がですよ、「ワシ、ミキが好きやねん」って。漫才のミキですよ? で、「スケジュール勝手に見て、出番終わりに飯誘ったるんや。勝手にやけどな。これって…なんかのハラスメントやろか?」なんて、不安そうに聞いてんの。
いやいやいや、今さらか! おまえなァ、平成も令和も越えて、今になって「これって、なんやろか?」て、おでんツンツン男の再来か! と思ったら、周りの若手が「パワハラです」って、即答。
「えっ…パワハラ? じゃあ、ミキが訴えたら、ややこしいことになる?」って、顔がみるみる青くなってんの。こっちは腹がよじれるほど笑ってるけども、当人はマジなのよ。しかもそのあと「電話で聞いてみようか? 好き? 嫌い?」って。
アホか! それが一番のハラスメントじゃい!
これにはカベポスターの永見だっけ? 「それ、公開パワハラです」ってツッコんでさ。上手いよな。で、雅は「じゃあ、もうミキには関わらんとこ…」ってシュンとして。まるでナマズが断食してるみたいな顔しててさ。
いやいや、違うのよ雅さん、それは「自粛」じゃない、「逃亡」だよ! ハラスメントってのはな、相手がどう思うかが基準だからって言うけども、それを逆手にとって「じゃあ関わらんとこ」は、ただの責任放棄。おまえさんが「好き」でやってたことが、「やばいかも」と思った瞬間にやめるって、それこそ「情熱ハラスメント」だよ。
でね、ここが面白いのよ。ミキの兄貴のほう、昴生が言ったとか言わないとか、「雅さんは怖いけど、飯おごってくれるし…まぁ…」って。で、弟の亜生が「うん…まぁ、しゃあないですね…」って苦笑いしてたらしい。
つまり、これよ!「NOともYESとも言わない空気」が一番の現代病なんだな。相手の意志が読めないからこそ、ハラスメントになるし、読めないまま強引にいったらパワハラ。読もうとして「好き? 嫌い?」って聞いたら公開処刑。じゃあ、何が正解か?
──黙って家に帰って、鍋でもつついて寝るのが正解よ。
でもまぁ、それじゃ芸人は務まらん。話してなんぼ、ツッコんでなんぼ。黙ってたら、ただの関西弁のオジサンよ。そんで、いまの芸人たちはみんなスマートでね、ハラスメントの勉強もしてる。「相手の意志を尊重しよう」とか、「多様性」とか言ってんだけども、これがまた難しい。
だって、昔はね、「嫌われたら勝ち」みたいな時代もあったのよ。毒舌でガンガン言ってナンボ。「あの人、嫌いだけど気になる」って、ファンだった。それが今は「嫌いです」って言われたら、番組から消えてるんだもの。芸能人って、空気とスポンサーの機嫌で命つながってる生き物よ。
それでもね、トミーズ雅の話を聞いてて、ちょっとグッときたのは、「ミキに電話して『好き? 嫌い?』って聞こうか」ってとこなのよ。たぶんね、あの人、本気で怖いと思ってんの。昔はそれが愛情だと思ってた。でも、いまはそれが通用しない。
──つまり、昔の愛情は、今のハラスメント。
そんな社会の空気に、トミーズ雅の鼻息がスゥーッと吸い込まれて、気がつきゃ「関わらんとこ」。これは芸能界の縮図でもあるし、人間関係の終着点でもある。「誤解されるくらいなら、近づかない」。それで本当にええのんかい?
──って、聞こうとしたけども、ハラスメントになるかもしれんので、ここで黙って、鍋でもつついて寝ることにいたします。
お後がよろしいようで。

2幕目

「ヒロイン願望問答」
あたしァね、テレビってのは嘘つきだと思ってたの。ところがね、最近じゃ本音がポロポロこぼれ出るから、こっちがドキドキすんのよ。
で、この前、元AKBの前田敦子さんがイベントで言ってたのよ。「残念ながら癖が強い役ばかりで、本当はキラキラした役もやりたいんです…」って。これ、聞きました? 正直すぎて、もはや芸能界が黙ってない
そりゃあそうだよ。
元アイドルが「キラキラした役やりたい」って言うのが、ニュースになっちゃう時代だもの。世知辛えねぇ。
あたしの知り合いに、これまた芸能界を目指してた若い女の子がいてね。名前をユメちゃんて言うんだが、これがまた“地味な美人”なのよ。
顔立ちは正統派、でも顔に「便利」って書いてあんの。ドラマで使い勝手がいいの。
で、彼女が最初にもらった役が――「精神病院から脱走してきた元アイドル」って役でさ。セリフが「私の声には悪魔が宿ってるの…フフフ」だよ?
おいおいおい、どこの月9だよ! って言いたくなるような、火曜サスペンスでも断られそうなやつ。
で、ユメちゃん、悩むわけ。「なんで私には“朝ドラのヒロイン”がこないんでしょうか…」って。
いや、あたしに聞かれても困るけどもね。しょうがないから言ってやったのよ。
「そりゃあねぇ、朝ドラってのは“いじめられて、泣いて、這い上がる”女の子が主役なんだよ。
あんた、顔が強いんだよ。泣いても強そうなんだよ。いじめ甲斐がねぇの」
「でも私、本当は“トースト咥えて走る”ような、そういうのやりたいんです…!」って言ってんの。
やりたいって言われてもね、こっちはもう朝ドラで“咥えたトースト”100回見てるのよ。
たまには納豆巻き咥えて出てこいよ。画面に粘り気が欲しいんだよ(笑)
でね、話戻しますけども、前田敦子さんの話よ。
「癖が強い役ばっかで、本当はキラキラしたい」って。
いや、だったらアンタ! AKBん時にもうちょい残しとけよ! 
“私センターです”って顔で、毎日キラキラしてたでしょ?
それが今や“夫に殺意を抱く主婦役”だとか“闇金の取立て屋”とかやってんだもん。
そんな役ばっかやってるから、久しぶりに恋愛ドラマ出たら
「元闇金が転生して初恋する」みたいな、わけのわからん脚本になるのよ
そもそもね、「意外性」ってのは世間が勝手にくっつけてくるのよ。
こっちはただ「うまく演じよう」としてんのに、プロデューサーが
「いや〜、元アイドルにしては病んでる感じが良かったッス!」とか言うの。
ほら、女優っていうより“罰ゲームみたいなキャスティング”されてるのよ。
これが現代の芸能界。
それで前田さん、今は“ロングヘアのヒロイン”目指して髪伸ばしてるって言ってたの。
あのねぇ、「髪なびかせたい」って。
この令和の世に“髪で勝負”しようって人、久しぶりに見たよ
でもね、わかるのよ。あたしも昔、落語界で「毒舌」って言われたとき、
ほんとは“好青年枠”狙ってたんだから。
そしたら「お前は毒があるからいい」って言われて、
毒しか注がれなくなったの。
あたしは落語界の“劇薬指定”よ。飲みすぎ注意
ま、結局さ、芸能界だって落語界だって、「イメージ」ってもんが先に立つの。
「この人はこう見えてほしい」っていう、世間の欲望の押し売りよ。
でもねぇ、そういう期待を全部ひっくり返すのが、ホントの“ヒロイン”だと思うの。
キラキラした役が欲しいって? 
だったら、クセだらけのまま、キラキラしちゃえばいいのよ。
世間の期待の逆を行く――それが女優だ。
そして、それを見抜けるのが――落語家だってんだ、まったく!
――オチがついたようで、なびいたようで、でも風は自分で起こすしかない。
ま、人生も舞台も、クセがある方が面白ぇんだよってね。

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