映画『#真相をお話しします』の主題歌として書き下ろされたMrs. GREEN APPLEの新曲「天国」は、まさにそのタイトルの通り、極限の感情と虚無が交錯する異色の作品となっている。主演を務める大森元貴自身がこの楽曲のボーカルを担い、感情を限界まで削ぎ落とした“虚無”の表現の中で、彼だけが到達できる領域の歌唱を披露している。
この楽曲のミュージックビデオは、極めてミニマルな構成となっており、空間そのものが“何もない”ことを強調することで、見る者に深い印象と問いを投げかけてくる。光の陰影、音の間、そして無音が織りなす構図のなかで、大森の声がまるで語りのように響き渡り、その空虚さが逆に強烈な存在感を放っている。
「天国」というタイトルにも関わらず、楽曲全体に漂うのは“救い”ではなく“喪失”であり、“希望”ではなく“終焉”だ。だが、その終焉の先にこそ新たな意味が見出せるのではないか、という余韻が残る。まるで人生の最期に立ち会っているかのような、あるいは既に天国に辿り着いた魂が最期の言葉を発しているかのような、そんな錯覚を覚える演出が随所に盛り込まれている。
ラストシーンには、まさに息を呑むほどの映像が用意されており、それまでの静寂と抑制が一気に解放される。その瞬間に訪れるのは、カタルシスなのか、それとも絶望なのか――受け取り方は観る人によって大きく異なるが、それこそがこの作品の真の魅力でもある。
「天国」は、Mrs. GREEN APPLEの音楽的な成熟、そして表現者としての大森元貴の進化を明確に示す一曲である。これまでの彼らの楽曲とは一線を画しながらも、根底に流れる“人間の深層”に迫るアプローチは変わらない。それは、ただキャッチーなメロディーを届けるだけではなく、リスナー一人ひとりの心の奥底に潜む何かを揺さぶるために存在している。
また、映画『#真相をお話しします』との相乗効果も絶大であり、物語の本質に深く切り込むこの楽曲は、映画のストーリーをより強く、より深く、観客の記憶に刻み込むことだろう。主演の菊池風磨との対比、そして中条あやみ、福本莉子、伊藤健太郎らの繊細な演技とも相まって、「天国」はまさにこの映画の“もう一つの真相”とも言える存在になっている。
2025年5月2日にデジタルシングルとしてリリースされたこの曲は、7月8日に発売予定のアルバム『10』にも収録される予定であり、さらに同日にはBlu-ray＆DVD『Mrs. GREEN APPLE on “Harmony”』も発売される。ファンにとっては見逃せない連続リリースであり、Mrs. GREEN APPLEがこの時代に届けるメッセージの集大成とも言える。
MVの映像美、構成、演出はどれも高水準であり、音楽と映像の融合が生み出す“感覚の映画”とも呼べる本作は、まさに2025年の音楽シーンにおけるマスターピースとなる可能性を秘めている。
Mrs. GREEN APPLEの新境地にして、現代の混沌とした感情を映し出す鏡のような存在、「天国」。その響きは、あなたの心の奥底に何を残すのか――ぜひその耳で、その目で、確かめてほしい。
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