六人の嘘つきな大学生

監督/佐藤 祐市

キサラギ(07)
ストロベリーナイト(13)
シティーハンター(24)

とにかく「キサラギ」がめちゃくちゃおもしろい
伏線回収もふくめて、ミステリー映画として、今見ても面白い映画の監督。
今年は鈴木亮平「シティーハンター」もよくできてた

出演
浜辺美波
赤楚衛二
佐野 勇斗
山下美月
倉 悠貴
西垣 匠

浅倉 秋成(あさくら あきなり)の原作小説を映画化。
ではあるが、原作を未読で鑑賞

一言でいうと
面白い!のは間違いないが絶賛…でもない
けど見ごたえはある
でも伏線回収が十分ではない…けどラストまでドキドキが止まらない作品。

監督の過去作の「キサラギ」ほどの大どんでん返しはない

小説からかなり改変された所や浜辺美波のイメージ性を守るためなのか、釈然とした部分もあるのが惜しいところかもしれない。

誰もが憧れるエンタテインメント企業「スピラリンクス」の新卒採用。
最終選考まで勝ち残った6人の就活生に課せられたのは“6人でチームを作り上げ、1か月後のグループディスカッションに臨むこと”だったがな課題の変更が通達される。
「勝ち残るのは1人だけ。その1人は皆さんで決めてください」
会議室という密室で、共に戦う仲間から1つの席を奪い合うライバルになった6人に追い打ちをかけるかのように6通の怪しい封筒が発見される。その中の1通を開けると…
そして次々と暴かれていく、メンバーの過去の罪。誰もが疑心暗鬼になる異様な空気の中、1人の犯人と1人の合格者を出す形で最終選考は幕を閉じる。

悪夢の最終面接から8年が経ったある日、
スピラリンクスに1通の手紙が届くことである事実が発覚する。
それは、<犯人の死>。

犯人が残したその手紙には、「犯人、さんへ。」という告発めいた書き出しに続き、あの日のすべてを覆す衝撃的な内容が記されていた。
残された5人は、真犯人の存在をあぶりだすため、再びあの密室に集結することに…
嘘に次ぐ嘘の果てに明らかになる、 あの日の「真実」とは――

おそらく小説という文字だけで表現したであろうミステリーと映像化するうえで、文字だけだからこそ読者を惑わすことができるミステリーをどこまで作り込めるか?にかなり苦労したのではないか?と思われる作品。

昨今の浜辺美波の映画「もしも徳川家康が総理大臣になったら(24)」のようなライトなものではなく演技は女優への布石とも言える役どころは見ごたえある。
ただ次が「アンダーニンジャ(25)」というのも、上映する順番と収録する順番はリンクしているわけではないが、もう少し本格的な女優活動をさせてあげてほしい気もする……

それは浜辺美波が演じた主人公・嶌衣織(しま いおり)の設定やポジション。彼女の描き方などにもみてとれる。
彼女のキャラクターそのもののあっさりと描かれているのに加えて、過去の悪事の深堀りはなされない…というのは、浜辺美波の女優イメージを尊重するためなのでは?と穿ってみてしまうほどの情報不足なまま映画は終わる…

赤楚衛二くんとは「思い、思われ、ふり、ふられ(20)」でも共演していたのもあって、息のあったやり取りを見られる上に、共演の若手俳優全員がしっかりとした演技を見せてくれるので上映中に演技力でダレることはほぼなかったところは、若手俳優の頑張りとも言える。
特に冒頭の短いシーンのなかで、嶌衣織(しま いおり)へ好意を抱く雰囲気をふんだんに出せたのは彼の演技力のたまものともいえる。
セリフだけではなく、雰囲気として出せていたのは素晴らしい。

また、
佐野 勇斗(さの はやと
山下美月
倉 悠貴(くら ゆうき
西垣 匠(にしがき しょう

それぞれが、役柄内での自身の過去の悪事をバラされた際の動揺や逆ギレとも言える部分での演技は素晴らしいものだった

特に
佐野 勇斗(さの はやと)の独白的な語りのシーンはかなり鬼気迫るものがあったし、山下美月の逆ギレ的演技はすごかった

原作未読であっても浜辺美波演じる嶌衣織(しま いおり)の違和感は感じられる…ものの、それとない「なんか」を感じさせられたのは浜辺美波も演技力があってこそであり、シナリオ展開的には不足している部分が多々ある。
彼女の過去が明確にならない部分も、女優としてのイメージを守るためと言われても仕方ないところかもしれない…が、映画作品としてみた場合は消化不良感がでてしまう。

その一方で 赤楚衛二演じる波多野がすべて広げた風呂敷を上手にたたみまとめるポジションとして機能している。
原作通りの展開の部分と改変をした部分がそれぞれあると思うが、それらをまるく収めている…が、やはり映像作品としてのミステリー感は若干弱さを感じるのも事実

その一方で、犯人ではないのか?と疑心暗鬼が様々繰り広げられ、容疑者が二転三転する展開はとても面白い

それは前半の6人が徐々に仲良くなり、それぞれのキャラクターポジションが明確になる最初の30分が色濃く描かれていたからこそだともいえる。

映画そのものは2部構成になっているが、解明編ともいえる2部がとんとんで進みすぎるのももったいなかったところかもしれない。が上映時間を考えると仕方のないものかもしれない。

その一方で集団面接にしても、対人の関係性にしてもだが、学生時代に自分自身が感じたことをサラリと言語化して語ってくれるシーンなどは溜飲を下げる間隔もあったりする

会社の面接でも、短い時間でその人の本質を見抜けるわけがない…というのはほんと「激しく同意!」という部分でもある。

しかし、就職試験を受けに来た人が、そこにいたるまでの人生で得たものを感じることもあるので、全否定はできないよな
と思ったり

その一方で、短期で共通した目標のために協調路線で頑張れる部分の表現と演技は素晴らしいとともに、いまのSNS上でもよく見られる雰囲気を感じた。

加えて伝え聞こえてくる情報の上辺だけを自分自身で、自己都合解釈をしてイメージを決め打つ部分などもSNS世代へのアンチテーゼ日買い物を感じるシナリオ展開は現代的とも言える。

情報を理解するには俯瞰で物事を見ることも大切であること、
切り取り情報に惑わされることの危険性などもシナリオではかたっているところは、ネット社会、ネット情報。とくに切り取り情報への危険性を表現しているとも言える。

映像化としては及第点
映画作品としては十分面白いものなっており、若手演技派俳優の共演だけでも大きなスクリーンで観る価値がある作品です。

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