【山岳妖怪図鑑】半袖短パン天狗

登山とは厳しい環境下で行なうもの。登山者は適切なウエアをレイヤリングし、万全の装備で山に挑む。そして森林限界を越えて風や寒さが厳しくなるころ、ストイックに眉間にしわを寄せながら「いよいよ過酷な戦いが始まるぞ!」と気合いを入れ直す。そんなとき、突然その登山者の前に「半袖短パン天狗」は姿を現す。

その風貌は「あれ? なに? コンビニ行って来たの? え、寒くないの?」と、思わずカトちゃんばりの二度見をかましてしまうほどの無防備さ。赤ら顔で鼻が高いその姿は一見するとただの陽気なアメリカ人に見えるが、じつは平安末期から生息が確認されている日本の妖怪。その割にはハンバーガーとプロテインが好物。皮膚は人間の倍の厚さを誇り、雪が降っていようと岩場だろうと短パンで平気だ。たまに長ズボンを穿くときもあるが基本ジーンズ。スニーカーだろうと平気で岩場を登っていく。たまに女の天狗もいるが、タンクトップにショートパンツという「もう着なくていいじゃん」ってくらいの防御力で稜線を闊歩している。

基本的に人に悪さはしてこないが、この妖怪を見ると「気合い入れて重装備で登ってる自分がアホらしくなってきた……」「そりゃこいつらにゃオリンピックで勝てねえよ……」と妙に自虐的な気分にさせられるので注意が必要だ。

文・イラスト/ユーコンカワイ @yukonkawai
(PEAKS 2019年6月号 No.115より)

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